日本出版学会 翻訳出版研究部会 設立準備会 (2018年3月24日開催)

■ 日本出版学会 翻訳出版研究部会 設立準備会 (2018年3月24日開催)

設立趣旨説明

 出版書籍全体の7パーセント、5000冊を占める翻訳書。
 高等教育の普及で翻訳書の層は厚くなり、読者の吟味は厳しくなっている。
 翻訳教育という点では、大学に273の翻訳講座があり、53の翻訳学校で翻訳者養成が行われている。昔に比べれば訳文の質は上がってきていると言えよう。
 だが、生産者としての編集側の態勢はどうか。
 翻訳書編集者の養成・教育がなおざりにされている。ごく少数の社を除けば、翻訳書専門の編集者はおらず、育成は場当たり的なオンザジョブトレーニングに委ねられている。大方の編集者は英語ができず、自社なり・自分なりの翻訳の価値基準を持たない。翻訳者の起用も恣意的だ。これが世に望ましくない翻訳書を生んでいる原因のひとつになっている。
 「翻訳は商品」とみなす産業翻訳業界では、早い、よい、安い、が望まれる翻訳であると認識されている。これを鵜呑みにするわけにゆくまいが、出版界においても翻訳の方法論が研究され、取り入れられ、独自の価値基準を打ち樹てる時期ではないだろうか。
 翻訳の名を冠した学会もあるが、抽象論が中心で現場との接点は少ない。
 翻訳出版部会の設立により、編集者、翻訳者、研究者が実践的に交歓できる場が生まれ、現場学である当学会の活性化が図られるだろう。
 翻訳の価値基準、翻訳出版史、翻訳書編集者の育成、新人翻訳者の発掘、語学力の向上、海外情報の取得、海外の翻訳書編集者との交流、翻訳出版の事例研究、誤訳・悪訳の事例研究など、取り上げるべきテーマは引きも切らない。

本年度計画

 翻訳出版部会設立1年目の本年度は、5月より3月まで毎月原則第2土曜日1時~2時半、講義形式で部会を開催する。5月からの3回は、翻訳教育者の柴田耕太郎氏による英文正読を予定。翻訳書を手掛ける編集者の参加を特に期待する。

日時:2018年3月24日(土)午後3時~4時30分
会場:(株)アイディ 会議室
    東京都新宿区愛住町22 第三山田ビル6階
参加人数:9名(会員9名)