「出版統計から考える―紙の本と電子本の近未来」下村昭夫(2016年5月23日)

関西部会(2016年5月23日)

(共催:立命館大学大学院文学研究科行動文化情報学専攻「文化情報学専修」ワークショップ)

「出版統計から考える―紙の本と電子本の近未来」

下村昭夫(出版メディアパル)

大阪屋の債務超過、栗田出版販売の民事再生法申請、太洋社の廃業と、相次ぐ大手取次の崩壊で出版業界に激震が走りました。
そして「大阪屋栗田―OaK(オーク)出版流通」の誕生と、かつてない勢いで出版流通の再編状況が生まれており、大きな転換点を迎えているといえます。
「激変する出版産業・出版流通の状況」をどう分析し、私たちは、「いま、何を考え、どのような方策を講じればよいのか」、産業統計データから見えてくる「紙の本と電子の本の近未来」を考え合いたいと思います。

1. 二つの出版産業統計
 よく知られているように、日本の出版産業統計には、二種類のデータがあります。
 ひとつは、出版科学研究所の『出版年報指標』で、取次を経由した一般出版物を対象にしたものです(添付データ)。
もう一つは、出版ニュース社の『出版年鑑』の統計です。
若干の違いはあるが、いずれのデータも、出版産業が1996年をピークに右下がりの減少を続けており、出版産業が厳しい状況下に置かれていることを如実に示しています。
しかし、欧米の主要国と比較すると、この傾向は、きわめて、日本的事象と言えます。
もっとも、日本のように、委託制度を基本に「書籍と雑誌を同じ出版物流」で扱っている国は無く、『出版年鑑』に公表される各国の出版産業データは、書籍中心であることに着目する必要があります。

2. 電子書籍に関する統計
 『出版指標年報』や『出版年鑑』には、電子書籍の関する統計は無く、もっぱらインプレスR&Iの発行する『電子書籍ビジネス報告書』のデータを基に論じられてきましたが、2016年度版の『出版指標年報』には、初めて電子書籍の産業データが公表されました。

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 下村会員の報告は、単に「出版産業データ」に関するものでなく、「出版の原点から出版の未来を考える」内容でした。
参加数:6名(会員5名、学生1名、会場:立命館大学衣笠キャンパス・平井嘉一郎記念図書館カンフレンスルーム
(文責:関西部会 湯浅俊彦)