出版産業変容の透視図――「紙の本」の未来と「デジタルな本」の未来  植村八潮 (2010年11月22日)

■出版経営研究部会・デジタル出版研究部会 共催  発表要旨(2010年11月22日)

出版産業変容の透視図
――「紙の本」の未来と「デジタルな本」の未来

植村八潮

 出版経営研究部会・デジタル出版研究部会は2010年11月22日に共催で例会を開催した。報告者は植村八潮氏(東京電機大学出版局長),論題は「出版産業変容の透視図――紙の本の未来とデジタルな本の未来」であった。参加者60余名。於東京電機大学。配布されたレジュメは次の通り。

1.電子書籍ブームと社会・技術
  (キーワード:ブーム,技術決定論,社会構築論,出版離陸)
 ・電子書籍ブームの実態/メディア(技術)と社会(コンテクスト)の関係/出版文化産業のもつ二面性 「文化と産業」,「アートとビジネス」
2.ディスプレイで「読む」ことの意味
  (キーワード:読書論,読む,表示装置,本の解体,メディア,コンテンツ,テキスト,メッセージ)
 ・コンテンツはメディアから自由にはならない/コンテンツの値付け/電子書籍端末授業の問題点
3.新しいメディアとしての電子書籍端末
  (キーワード:Kindle,iPad,デジタル読書,キャズム,文字情報流通,電子書籍市場)
 ・「電子書籍」に向く本の種類/各種読書端末の普及/電子書籍の特徴
4.産業構造の変化――電子書籍流通基盤の構築
 ・出版コンテンツの流通基盤

 アメリカでの電子書籍成功伝説を背景に,アップル社のiPadが2010年5月に日本市場で販売され,マスメディアは「電子書籍元年」「電子書籍ブーム」「書物の終焉」などと喧伝した。電子書籍については新しいビジネスチャンス到来だと期待をもってみるものと,書店業・取次業・印刷業・出版業などのように不安をもってみる2つに大別できる。報告者は,最初に「ブーム・流行」という言葉・概念を吟味し,書籍電子化の経緯を検討し,アメリカの状況なども紹介しながら,電子書籍の現状と未来そして課題等について図解をまじえながらレジュメに沿って概説した。質疑応答は活発に行われたが,「紙の本」の未来についての質疑はなかった。
(木下修)