アニメファンの「テレビの保存」と受容空間 永田大輔 (2019年9月19日開催)

■ 雑誌研究部会 開催要旨 (2019年9月19日開催)

アニメファンの「テレビの保存」と受容空間
――1970年代から80年代のアニメファンの雑誌利用実践に着目して


永田大輔 (明星大学)

 2019年9月19日に明星大学等で非常勤講師をつとめる永田大輔氏を報告者に迎え、雑誌研究部会を開催した。アニメファンの雑誌利用に焦点を当てた本報告では、『アニメージュ』と『アニメV』などのアニメ雑誌の読者投稿記事を分析し、1970年代~80年代においてアニメファンがアニメを観てどう記録するかという視聴行為の実践がいかに行われ、それが雑誌上の投稿欄等でどのように扱われていたのかを考察された。報告の前半では78年以後~80年代において『アニメージュ』の読者層が定まっていくプロセスを考察し、誌上で「アニメファン」という読者像が認識され、形成されていく流れを取り上げた。その際にテレビ番組を記録し残すためのファンの実践として、(ビデオ利用の代替行為としての)カセットテープへの録音実践がその共同体形成の一旦を担っていたと分析する。後半部では、OVA(オリジナルビデオアニメ)、レンタルビデオなどの変化がおきた80年代における実践がアニメ雑誌上でどのように語られていたのかを分析した。
 上記の分析により、雑誌が独自の趣味集団としてアニメファンを記述するきっかけとして機能し、子ども向けに留まらないアニメブーム以後の新たなアニメファンの登場に対応して雑誌のコンセプトが定められていく経過を明らかにした。また、録画録音したカセットテープ・ビデオテープの交換という視聴補完装置としての雑誌読者共同体の実践、そしてビデオ普及に伴うレンタル店でのアニメ(そしてそのファン)の扱われ方などが読者投稿記事から浮かび上がった。アニメ雑誌の記事により、当時のアニメ視聴行為の実践を分析すると同時に、知識共有が雑誌で行われていたことを確認し、複合的なメディア受容とそこにおける雑誌の役割を確認した。
 報告の後、フロアを交えて議論を行い、放送の有無により差があることから、地方と都市部の関係性を考慮する必要性、個々のアニメ雑誌の差異、そして映画やドラマとは異なったコマを重視するアニメの独自性など幅広い観点の議論が行われた。

日 時: 2019年9月19日(木) 午後6時30分~8時30分
会 場: 日本大学法学部三崎町キャンパス10号館 1031講堂
参加者: 会員・非会員 計12名

(文責:玉川博章)