マンガ産業の現状と未来――マンガ産業30年の検証  中野晴行 (2004年11月10日)

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 出版経営研究部会   発表要旨 (2004年11月10日)

マンガ産業の現状と未来
――マンガ産業30年の検証を通して

 出版経営研究部会は11月10日,東京・神田錦町の東京電機大学で,第2回研究会「マンガ産業の現状と未来」を開催した。本年,筑摩書房から「マンガ産業論」を上梓した中野晴行氏が講師となり,会員,非会員を合わせて70人余が参加した。
 日本のマンガ産業は,その市場規模と収益性において出版産業の土台を支えていると言えるが,1995年以来,コミック雑誌の売れ行き不振をはじめとして低迷を続けている。中野氏はこうしたマンガの低迷を産業的な見地から客観的に調査・検証する必要性があるとし,特にその市場構造が抱える構造的な問題に対して,現在のマンガ家や出版社が有効な手を打てないでいる現状を批判的に分析した。
 中野氏は,かつて“大学生が電車の中で漫画を読んでいる”と外国人を驚かせた日本マンガ市場が,団塊の世代の成長と共に多様なジャンルを獲得し,経済的にも内容的にも拡大してきたと指摘。その一方で,読者の成長とともに歩んだマンガが,現在の小学生にとっては“難しくて読めない”ものになっているという証言を紹介し,団塊の世代が大量に引退し始める2007年を境に,急激な収縮を始めるのではないかという「2007年危機説」を唱えている。
 今回の研究会ではこうした氏の考えを話して頂き,後半の質疑応答では,2007年問題を乗り越えるための方策などについて,大手出版社の現役編集者などから質問が投げかけられた。
 こうした質問に対し,中野氏は特にマンガ雑誌が低迷していることに危機感を示し,「かつての文芸誌のように,編集者が“雑誌は売れなくても単行本で採算がとれているから良い,雑誌はあくまでも単行本を作るためのもの”という言い訳が出てきているようだが,これは非常に危険だと思う。雑誌こそが新しい読者を呼び込むのであって,その雑誌に活力が無くなれば産業全体が衰退する。しかも,マンガ産業の衰退は周辺のキャラクター産業,ゲーム産業などの衰退にもつながり,大変大きな影響を及ぼすことになる」と述べ,マンガの生産サイドが危機感を持ってさまざまな仕掛けで市場を刺激し続けることが必要だと指摘した。
(文責:星野 渉)