本の街・神保町の再生と書店の役割  柴田信 (2007年4月5日)

■ 出版流通部会   発表要旨 (2007年4月5日)

本の街・神保町の再生と書店の役割
―― 21世紀の『ヨキミセサカエル』論

 2007年4月5日,出版流通研究部会では,岩波ブックセンター・信山社社長の柴田信さんをお迎えして,「本と人と街と,そして書店」をテーマに部会を開催した(参加者25名,八木書店会議室)。
 柴田さんは,50年に及ぶ書店人としての心意気と「本の街・神保町を元気にする会」の3ヶ月という中間レポートをお話されました。

I.「本の街.神保町を元気にする会」の設立経過
 本の街・神田神保町の歴史は古く,100年を越えています。最近の調査によれば,23の新刊書書店と141の古書店が軒を並べ,周辺の出版社,プロダクション,取次店や印刷・製本関連業者を含めると,まさに「本の街」の名にふさわしい地場産業といえます。
 その本の街・神保町は,このところ,活気が見られません。そこで,私たちは「本の街・神保町を元気にする会」を2006年12月に設立しました。古書店や新刊書店に周辺の大手出版社を加えた強力なグループです。
 この「本の街・神保町を元気にする会」の趣意書によりますと,三つの方針があり,街の再生を比較的長いスパンで捉えてようとしています。
一.神保町に関する情報の一元化(当面は「BookTown・じんぼう」を中心に情報をまとめ,いずれインターネット上での集約に発展させたい)
一.街全体のインフラ整備(地図設置や,飲食店,喫茶店情報など多くの人々が歩きやすい優しい環境づくり提言)
一.本に関する企画・イベント(編集長講演会・講座等出版会との連携をふくむ)
II.本の街を再生させるためのプロジェクト
1,神保町に関する情報の一元化
 インターネットを活用した街情報の充実化をめざして,「BookTownじんぼう」の拡充と進化を進めています。「新刊書店の在庫情報」の検索のほか,「ジャンル別古書店案内「ジンポウナビ」,古書店の在庫が検索できる「古書店データベース」,地域の明治大学図書館・千代田図書館の「在庫情報」,本の街のイベント案内などがご覧になれます。
 このうち,三省堂書店と専門書の書店としての信山社の在庫データを共有しての読者サービスは,もっとも喜ばれています。
2,街全体のインフラ整備
 二つ目には,街づくりの一環として,「バリアフリー(トイレ・地下鉄エスカレーター・エレベーター・街の案内板)の充実」「外国人への案内チラシ・地図の充実」「神保町の飲食店,特色ある物品の販売店等との連携」「神保町の史跡再発見」などの情報の強化を考えています。
3,本に関する企画・イベント
 三つ目には,本に関する企画・イベントを増やしていきたいと思っています。7月には,「神保町花月」のオープンに向けてのアクションプラン,秋には,50年の歴史を誇る「神田古本まつり」と新刊書書店の「神保町ブックフェスティバル」などの開催,そのほか,日常的なイベントとして,「東京古書会館でのイベント」「新刊書店のイベント」「編集長講演会・講座など,大学及び出版社との連携」など神保町開催されるさまざまなイベントとの連携を強めて生きたいと考えています。
 また,NPO神田学会十インターユニバーシティ神田の五大学の学生さんから,調査・研究を踏まえた町おこしの提案が出てきますし,行政サイドからは商工会議所千代田支部の神保町活性化基本計画が出ております。
 本の街・神保町に働く私たちは,日常性のなかで独自の活動を続けるのはもちろんですが,同時にこれらの提案に積樋的に関わって行かなければなりません。現場の受け皿として問われているのは実は私たちなのです。

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 柴田さんの著書に「ヨキミセサカエル」(日本エディタースクール出版部刊)がある。この街で42年間働いた一人として,多くの人々のエネルギーが一つになって,「本の街・神保町」が活気溢れる街に再生されることを願っている。
(文責:下村昭夫)