2009年度活動報告(2009年4月~2010年3月まで

2009年度活動報告(2009年4月~2010年3月まで

■ 1.概 況

 1969年3月に設立された日本出版学会は,今年度を持って創立40周年を迎えることができた。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換を行い,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラムへの参加を継続的に行ってきた。
 これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2009年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
 学会創立35周年記念事業として始まった「出版研究国際交流基金」への任意の寄付の受け入れ等は,継続事業となっている。この基金が設置されていることで,永続的な国際交流を可能となっており,今後の国際出版研究フォーラムに対し,安定的な支援が行える。
 このような状況の中において,2009年5月9日に國學院大學渋谷キャンパスで春季研究発表会を開催した。参加者は109名であり,12名の研究発表および印刷博物館・樺山紘一館長による特別講演が行われた。
 また,秋季研究発表会は,2009年11月14日に関西学院大学 大阪梅田キャンパスで開催され,37名の参加者で,5名の研究発表と西村七兵衛会員による特別講演が行われた。
 「会員名簿」を新たに発行し,会員間の情報交流の一助とすることができた。

■ 2.会員数

 正会員        373名
 賛助会員    法人  51社
         個人   1名
 名誉会員         5名

■ 3.総 会

 2009年度総会は,2009年5月9日(土),東京都渋谷区の國學院大學渋谷キャンパスにおいて147名(委任状を含む)の会員が出席,2008年度事業報告,同決算,同学会創立35周年記念事業決算,2009年度事業計画案,同予算案,同学会創立35周年記念事業予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第30回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
 【日本出版学会賞・奨励賞】
  阪本博志『「平凡」の時代――1950年代の大衆娯楽雑誌と若者たち』(昭和堂)

■ 4.理事会

 2009年度の会務を行うため,2009年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
  第1回: 2009年7月6日
  第2回: 2009年9月1日
  第3回: 2009年10月13日
  第4回: 2009年12月15日
  第5回: 2010年2月1日
  第6回: 2010年3月15日

■ 5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(2)雑誌研究部会
 2010年3月9日(東京電機大学)「東アジアに越境する日本雑誌」吉田則昭
(3)出版技術研究部会
 2010年1月19日(東京電機大学)「製本業界の現状と展望」齋藤健太
(4)出版教育研究部会
 2009年10月23日(日本大学法学部)「『大学における出版教育のあり方』調査のすすめ方について」川井良介,蔡星慧,塚本晴二朗
(5)出版経営研究部会
 2009年4月27日(東京電機大学)「Amazon.co.jpと日本の出版市場」渡部一文
 2009年11月17日(日本大学法学部)「日本における出版流通の形成―購書空間,取次とは」柴野京子
 2009年12月8日(日本大学法学部)「中国における日本社会科学関係書籍の翻訳・出版について」劉迪
(6)出版著作権研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(7)出版編集研究部会
 2009年11月11日(上智大学中央図書館)「『少女の友』と実業之日本社」岩野裕一
(8)出版法制研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(9)出版流通研究部会
 2009年6月18日(八木書店)「版元ドットコム「成功」を考える」沢辺均
 2009年10月27日(八木書店)「デジタルコンテンツと紙の本の近未来――多様な表現ができる技術と流通」萩野正昭
 2010年1月19日(八木書店)「激変する出版流通――2010年を展望する」星野渉
(10)デジタル出版研究部会
 2009年5月12日(東京電機大学)「IDPF/ePubフォーマットと欧米の電子書籍リーダー」金井剛志
(11)歴史部会
 2009年10月9日(九段生涯学習館)「序文考――『出版月評』の言説を契機に」富塚昌輝
 2009年11月19日(日本エディタースクール)「森田草平『輪廻』における検閲――伏字とページ差し替えをめぐって」牧義之
(12)関西部会
 2009年4月21日(大阪市立大学大学院梅田サテライト)「書物の解剖学――本を解体する」中西秀彦
 2009年7月28日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「関西における出版の現状と課題」内山正之
 2009年9月25日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「デジタル環境下における出版と図書館」湯浅俊彦
 2009年10月27日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版研究における流通からのアプローチ――『書棚と平台』をめぐって」柴野京子
 2010年3月23日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「『〈著者〉の出版史――権利と報酬をめぐる近代』をめぐって」浅岡邦雄
 2010年3月30日(法蔵館)第1部 講演「板木は語る」永井一彰,第2部 法蔵館蔵の板木の見学会
(13)日本出版学会/日本ペンクラブ 合同シンポジウム
 2009年6月30日「グーグルブック検索和解協定を検証する――出版流通・表現の自由・国際比較の観点から」
 2009年7月27日「日本版デジタル・アーカイブを構想する――公共基盤・民間運営・表現の自由の観点から」
 2009年12月18日「グーグル・ブック検索訴訟 新和解案をめぐって――何が変わったのか,今後の動向」

■ 6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2009年5月9日,國學院大學渋谷キャンパス)
〈研究発表 第1分会〉
1.「中小出版社における「出版営業のIT化」の影響――業務フローの変化と標準化への指向」高島利行
2.「「デジタル雑誌」メディアの一考察――「デジタルでページをめくる」という視点からの研究」梶原治樹
3.「経営者の出版活動と文化作品としての書籍――成長期に突入した出版実現文化と企業出版」主藤孝司
4.「ウェブ時代の雑誌の在り方に関する一考察――雑誌再生の途を探る」高橋文夫
5.「音声訳と出版物との関わりを考える――びぶりおネットを視点として」近藤友子
6.「日本における電子書籍の流通・利用・保存の現状と課題」湯浅俊彦
〈研究発表 第2分会〉
7.「台湾における書籍出版の一考察」曾美芳
8.「英語圏における出版文化史研究の動向――日本への関心の薄さを問題にして」亀井ダイチ・アンドリュー
9.「近代日本の絵本と住吉大社御文庫蔵書――第2回調査報告」大橋眞由美
10.「原著者による版の改定の取り扱いについて――『イデーン』は誰が書いたのか?」信木晴雄
11.「近代フランス市民社会成立期における定期刊行物――「ハイブリッドな形態」が意味するもの」平正人
12.「ブロックハウスとマイヤーの合併――ブロックハウス百科事典の行方」佐藤隆司
〈特別講演〉
「出版史としての印刷史」印刷博物館・樺山紘一館長
(2)秋季研究発表会(2009年11月14日,関西学院大学 大阪梅田キャンパス)
〈研究発表〉
1.「大衆文学の転換 II ――大佛次郎「由比正雪」・吉川英治「貝殻一平」の明暗」中村健
2.「図書館におけるヤングアダルト向け資料の検証と今後の展開」村木美紀
3.「耳で読む読書:出版物の音声による利用とは」近藤友子
4.「ナチ時代の『季刊社会経済雑誌』」佐藤隆司
5.「岡山の出版と岡山文庫」真鍋瑞貴
〈特別講演〉
「京の仏教書出版」西村七兵衛

■ 7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2009年3月20日に第39号(A5判,204頁,1000部,定価2,730円〔本体2,600円+税〕を発行し,合わせて第40号の編集を行った。

■ 8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時行うと共に,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
  第124号=16頁,2009年4月20日(印刷部数700部)
  第125号=68頁,2009年10月5日(印刷部数700部)
  第126号=32頁,2010年1月25日(印刷部数700部)
  第127号=16頁,2010年3月31日(印刷部数700部)

■ 9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。

■ 10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,第14回国際出版研究フォーラムの発表者,参加者の募集および主催者側である中国編輯学会との連絡・調整にあたった。

■ 11.出版企画委員会

 出版企画委員会は,日本出版学会史刊行委員会に参加し,編纂と刊行に携わった。
 『白書出版産業』の改訂版作業をすすめ,2010年度に刊行予定である。

■ 12.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第30回日本出版学会賞の審査にあたり,検討を行った。

■ 13.選挙管理委員会

 選挙管理委員会を組織し,理事候補選出選挙を行った。

■ 14.役員(2010年度総会まで)

会長=川井良介
副会長=芝田正夫 諸橋泰樹 植村八潮
理事=浅岡邦雄 伊藤洋子 茨木正治 江代修 遠藤千舟 大和博幸 金山勉 木下修 清田義昭 古山悟由 芝田正夫 志村耕一 下村昭夫 田中公子 塚本晴二朗 蔡星慧 中村幹 長谷川一 樋口清一 山田健太 山本俊明 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
監事=竹内和芳 八木壮一
事務局長=星野渉

■ 15.常設委員会

(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎植村八潮 芝田正夫 川井良介 中村幹 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 川井良介 芝田正夫 星野渉 諸橋泰樹
  学術出版研究部会=◎山本俊明
  雑誌研究部会=◎吉田則昭
  出版技術研究部会=◎中村幹
  出版教育研究部会=◎塚本晴二朗
  出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中村文孝 星野渉
  出版著作権研究部会=◎樋口清一
  出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧
  出版法制研究部会=◎阿部圭介 ○塚本晴二朗
  出版流通研究部会=◎下村昭夫 清田義昭 長谷川一
  デジタル出版研究部会=◎植村八潮 ○中村幹
  歴史部会=◎浅岡邦雄 田中公子
  関西部会=◎湯浅俊彦 江代修 吉川登
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 中村幹 石沢岳彦 茨木正治 伊藤洋子 稲田隆 上田宙 大和博幸 掛野剛史 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 下村昭夫 橋元博樹 長谷川一
(5)関西委員会=◎吉川登 石田あゆう 江代修 羽生紀子 福島聡 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎山田健太 遠藤千舟 竹内和芳 蔡星慧 羽生紀子 藤本信彦 文ヨンジュ 山本俊明 吉田公彦 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎川井良介 植村八潮 芝田正夫 茨木正治 大和博幸 掛野剛史 蔡星慧
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉
(9)選挙管理委員会=◎塚本晴二朗 阿部圭介 岩井義和 瀧川修吾 橋本純一

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