2015年度活動報告(2015年4月1日~2016年3月31日)

1.概 況

 1969年3月に設立された日本出版学会は,創立から46年をむかえ,新たな時代への歩みを進めている。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換をおこない,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラム(IFPS)への参加を継続的におこなってきた。
 これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2015年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
 今年度の春季研究発表会は,2015年5月16日に江戸川大学駒木キャンパスで開催した。参加者は98名であり,5名の研究発表および4つのワークショップがおこなわれた。
 また,秋季研究発表会は,2015年12月5日に奈良女子大学で開催され,53名の参加者で,7名の研究発表と「出版のパラダイム転換と歴史へのまなざし――出版研究の新たな展開に向けて」と題したシンポジウムがおこなわれた。

2.会員数

正会員      312名
賛助会員  法人  41社
名誉会員       2名
      (2016年3月末日現在)

3.総 会

 2015年度総会は,2015年5月16日,千葉県流山市の江戸川大学駒木キャンパスにおいて124名(委任状を含む)の会員が出席,2014年度事業報告,同決算,同特別会計決算,2015年度事業計画案,同予算案,同特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第36回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
【日本出版学会賞】
 永井一彰著『板木は語る』(笠間書院)
【日本出版学会賞奨励賞】
 牧 義之著『伏字の文化史』(森話社)

4.理事会

 2015年度の会務をおこなうため,2015年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2015年6月22日
 第2回: 2015年9月7日
 第3回: 2015年12月14日
 第4回: 2016年2月22日
 第5回: 2016年3月14日
 第6回: 2016年4月19日
 第7回: 2016年5月14日

5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 12月9日(上智大学四谷キャンパス)「Kodansha America Inc.がめざしたもの――国際出版活動の可能性」白井哲(出版史研究部会と共催)
(2)雑誌研究部会
 10月16日(日本大学法学部三崎町校舎)「1970年代雑誌言説研究――『ニューミュージック・マガジン』を手がかりに」山崎隆広
 1月21日(日本大学法学部三崎町校舎)「ボーイズラブ雑誌の現在――インタビュー調査を中心に」中川裕美
(3)出版技術・デジタル研究部会
 6月1日(ハイテクセンター)「出版界の明治二十年問題」橋口侯之介
 10月30日(ハイテクセンター)「書誌学入門――和本を調べる技術」大沼晴暉
 3月11日(八木書店)「雑誌の再生とデジタル化を考える――市場縮小・デジタル化に直面する雑誌販売の現状報告」梶原治樹(出版流通研究部会と共催)
(4)出版教育研究部会
 3月7日(日本大学法学部三崎町校舎)「PBL(Project Based Learning)型出版教育が“社会で求められる力”の育成に寄与する可能性――学生主体のコンテンツ制作ゼミの取り組みを事例として」橋本嘉代
(5)出版経営研究部会
 11月12日(日本大学法学部三崎町校舎)「2015年秋、いま出版産業では…「取次の再編か=これからの出版流通はどうなる」――産業状況・再販問題・消費税・取次の再編・世界の出版流通」星野渉(出版流通研究部会と共催)
 12月4日(日本大学法学部三崎町校舎)「「出版関連産業経営動向調査」から見えてくること」綴木猛
(6)出版史研究部会
 12月9日(上智大学四谷キャンパス)「Kodansha America Inc.がめざしたもの――国際出版活動の可能性」白井哲(学術出版研究部会と共催)
(7)出版編集研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討をおこなった。
(8)出版法制研究部会
 4月28日(日本大学法学部三崎町校舎)「再び「表現の自由と出版規制」をめぐる緊急リポート」山了吉(出版流通研究部会と共催)
(9)出版流通研究部会
 4月28日(日本大学法学部三崎町校舎)「再び「表現の自由と出版規制」をめぐる緊急リポート」山了吉(出版法制研究部会と共催)
 9月25日(八木書店)「出版文化交流と翻訳の仕事――日韓修交50周年と韓国の出版事情」舘野晳
 11月12日(日本大学法学部三崎町校舎)「2015年秋、いま出版産業では…「取次の再編か=これからの出版流通はどうなる」――産業状況・再販問題・消費税・取次の再編・世界の出版流通」星野渉(出版経営研究部会と共催)
 3月11日(八木書店)「雑誌の再生とデジタル化を考える――市場縮小・デジタル化に直面する雑誌販売の現状報告」梶原治樹(出版技術・デジタル研究部会と共催)
(10)関西部会
 5月12日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版と批評の来歴――『批評メディア論』をめぐる合評会」大澤聡・福嶋聡
 6月26日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「書字の論理/活字の論理」鈴木広光・中西秀彦
 8月25日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「日本の出版物流通システム――取次と書店の関係から読み解く」秦洋二
 9月19日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版史研究の手法を討議するその5:明治期の出版研究」[報告1]「近世書林と出版社の接続点――明治前期の新聞・雑誌研究より」樋口摩彌,[報告2]「明治期の出版(社)史料について」磯部敦
 10月1日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「海文堂書店の記憶と記録」平野義昌
 3月12日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版史研究の手法を討議する その6:ライトノベルへのアプローチ――研究の現状と今後の展望について」山中智省・中川裕美・村木美紀

6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2015年5月16日,江戸川大学駒木キャンパス)
〈研究発表〉
1.「ベルトランの理論的枠組みから見た日本の出版界のメディア・アカウンタビリティー・システム」阿部圭介
2.「ライトノベル図書の変遷とメディアとしての可能性――出版と図書館学的視点から」斎藤純
3.「青空文庫のテキスト構造を読む――人文情報学による試み」鈴木親彦
4.「「活字離れ」論の文化史――「定義」と「統計」の実証研究」林智彦
5.「戦時のラジオテキスト『国民学校放送』の一考察――国定教科書との内容比較を中心に」本間理絵
〈ワークショップ〉
1.「嫌中嫌韓本ブームを考える――出版界は「極化」しているか」塚本晴二朗・笹田佳宏・茨木正治
2.「出版史研究の手法を討議する」中村健・田島悠来・中川裕美・牧義之
3.「出版プラットフォームの変化――取次システムの崩壊と新たな基盤作りの動向」星野渉・堀鉄彦
4.「出版物のアクセシビリティ――出版の立場から議論する」植村八潮・野口武悟・成松一郎・村上卓也・岡山将也
(2)秋季研究発表会(2015年12月5日,奈良女子大学)
〈研究発表〉
1.「戦前週刊誌の連載小説の変遷――『サンデー毎日』の編集機能」中村健
2.「戦時下の少女雑誌――芹沢光治良『けなげな娘達』を例に」中川裕美
3.「ライトノベル雑誌がもたらしたメディア横断的な物語受容と創作――『ドラゴンマガジン』の事例を中心に」山中智省
4.「大宅壮一の活動における「集団」に関する考察――「大宅壮一東京マスコミ塾」と『茨木中学校生徒日誌』」阪本博志
5.「電子書籍の音声読み上げ機能を活用した読書アクセシビリティの保障」湯浅俊彦
6.「児童・YA 向け作品の電子書籍化の状況――緊デジリストの分析を通して」植村八潮・野口武悟
7.「Book Interchange Tag Suite(BITS)の多言語対応提案」中西秀彦
〈シンポジウム〉
「出版のパラダイム転換と歴史へのまなざし――出版研究の新たな展開に向けて」柴野京子・磯部敦・中村健

7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,第45号(A5判,276頁,700部,定価:本体2,600円+税)を2015年5月に発行し,引き続き第46号(A5判,146頁,700部,定価:本体2,600円+税)の編集をおこない2016年4月に発行予定である。

8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時おこなうとともに,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集にあたり,次の各号を発行した。
第140号=36頁,2015年10月30日(700部)
 また,当学会の公式ウェブサイトの充実をはかり,情報発信をおこなった。

9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。

10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,第17回国際出版研究フォーラムの開催にあたり,中国編輯学会との連絡にあたった。
 また,日本書籍出版協会が主催した日韓修好50周年記念イベントに,韓国電子出版学会とともに開催に協力した。

11.出版企画委員会

 今後の企画について検討をおこなった。

12.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第37回日本出版学会賞の審査にあたった。

13.選挙管理委員会

 選挙管理委員会を組織し,理事候補選出選挙をおこなった。

14.役員(2016年度総会まで)

会長=芝田正夫
副会長=植村八潮 塚本晴二朗 諸橋泰樹
理事=浅岡邦雄 石川徳幸 茨木正治 今村成夫 掛野剛史 菊池明郎 木下修 古山悟由 柴野京子 清水一彦 志村耕一 下村昭夫 玉川博章 蔡星慧 中西秀彦 中町英樹 中村幹 中村健 橋元博樹 樋口清一 星野渉(事務局長) 村木美紀 山田健太 湯浅俊彦 吉田則昭
監事=清田義昭 八木壮一

15.委員会メンバー

 (◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎植村八潮 芝田正夫 塚本晴二朗 中村幹 中村健 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 芝田正夫 塚本晴二朗 星野渉 諸橋泰樹
学術出版研究部会=◎橋元博樹 ○柴野京子
雑誌研究部会=◎玉川博章 ○石川徳幸 ○吉田則昭
出版技術・デジタル研究部会=◎中村幹 ○梶原治樹 ○田中公子
出版教育研究部会=◎清水一彦 ○蔡星慧
出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中町英樹 星野渉
出版史研究部会=◎柴野京子 ○浅岡邦雄 ○田中公子
出版編集研究部会=◎蔡星慧 植田康夫 飛鳥勝幸
出版法制研究部会=◎塚本晴二朗 ○樋口清一
出版流通研究部会=◎下村昭夫 ○岡部友春 清田義昭
関西部会=◎湯浅俊彦 中西秀彦 中村健 村木美紀
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 ○茨木正治 石沢岳彦 稲田隆 上田宙 掛野剛史 末包愛 玉川博章 長谷川一 山崎隆広 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 下村昭夫 田中公子 橋元博樹
(5)関西委員会=◎中西秀彦 中村健 村木美紀 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎樋口清一 蔡星慧 塚本晴二朗 山田健太 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎芝田正夫 石川徳幸 川井良介 鈴木広光 橋元博樹 樋口清一 吉田則昭
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉
(9)選挙管理委員会=◎中町英樹 清水一彦 末包愛 鈴木親彦 玉川博章