2016年度活動報告(2016年4月1日~2017年3月31日)

1.概 況

 1969年3月に設立された日本出版学会は,創立から47年をむかえ,新たな時代への歩みを進めている。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換をおこない,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラム(IFPS)への参加を継続的におこなってきた。
 これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2016年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
 春季研究発表会は,2016年5月14日に東京経済大学国分寺キャンパスで開催した。参加者は100名であり,4名の研究発表および4つのワークショップをおこなった。
 また,秋季研究発表会は,2016年12月3日に関西学院大学大阪梅田キャンパスで開催し,46名の参加者で,7名の研究発表および3つのワークショップをおこなった。
 さらに,2016年10月29日~11月1日に中国山東省青島市で第17回国際出版研究フォーラム(IFPS)が開催され,8名からなる代表団を派遣することができた。

2.会員数

正会員        313名
賛助会員    法人  40社
名誉会員         3名
        (2017年3月末日現在)

3.総 会

 2016年度総会は,2016年5月14日,東京経済大学国分寺キャンパスにおいて118名(委任状を含む)の会員が出席,2015年度事業報告,同決算,同特別会計決算,2016年度事業計画案,同予算案,同特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第37回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
【日本出版学会賞奨励賞】
 大澤聡著『批評メディア論――戦前期日本の論壇と文壇』(岩波書店)

4.理事会

 2016年度の会務をおこなうため,2016年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2016年5月14日
 第2回: 2016年6月20日
 第3回: 2016年9月13日
 第4回: 2016年12月12日
 第5回: 2017年3月13日
 第6回: 2017年4月17日
 第7回: 2017年5月13日

5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。

(1)学術出版研究部会
 2月17日(専修大学神田キャンパス)「出版流通の変容から考える学術出版の課題と役割」橋元博樹

(2)雑誌研究部会
 12月15日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「プレイボーイと日本の出版人」フィル・トモソビック(出版教育研究部会との共催)
 1月28日(東京都立多摩図書館)「東京都立多摩図書館(「東京マガジンバンク」)新築・移転オープン記念バックヤードツアー」(出版教育研究部会との共催)

(3)出版技術研究部会
 7月9日(プリザベーション・テクノロジーズ・ジャパン)「修復基礎実習と脱酸処理工場見学――プリザベーション・テクノロジーズ・ジャパン見学会」横島文夫

(4)出版教育研究部会
 7月7日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「『出版の冒険者たち』と私の編集者論――現代出版社・編集者の誕生とその歩みの中から」植田康夫(出版編集研究部会との共催)
 12月15日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「プレイボーイと日本の出版人」フィル・トモソビック(雑誌研究部会との共催)
 1月28日(東京都立多摩図書館)「東京都立多摩図書館(「東京マガジンバンク」)新築・移転オープン記念バックヤードツアー」(雑誌研究部会との共催)

(5)出版経営研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討をおこなった。

(6)出版史研究部会
 3月16日(上智大学四谷キャンパス)「出版社独立・創業史の系譜を追う」飛鳥勝幸

(7)出版デジタル研究部会
 10月18日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「大手出版社が小説投稿サイトを運営して学んだこと――「カクヨム」編集長が語る、これからの「出版」「編集」の姿」萩原猛

(8)出版編集研究部会
 7月7日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「『出版の冒険者たち』と私の編集者論――現代出版社・編集者の誕生とその歩みの中から」植田康夫(出版教育研究部会との共催)
 9月21日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「膨大な配信データから、今を創る!――『書評大全』『追悼文大全』『映画評大全』の編集から見えてきたこと」飛鳥勝幸
 11月15日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「“ネットファースト”で何が変わった──出版ビジネスを取り巻く環境変化についての考察」堀鉄彦

(9)出版法制研究部会
 12月20日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「ドイツにおける「意見表明の自由」の保障について――歴史修正主義的な表現への規制を中心に」田上雄大
 2月20日(日本大学危機管理学部)「キュレーションサービスにおける編集のあり方」宮下義樹

(10)出版流通研究部会
 6月30日(八木書店)「2016年、いま出版産業では…「改めて考える取次の機能と現状」=これからの出版流通を考えるために」鈴木親彦
 9月15日(トーハン桶川SCMセンター)「2016年、いま出版産業では…世界屈指の流通システム「桶川SCMセンター」見学会=続「改めて考える取次の機能と現状」」鈴木親彦

(11)関西部会
 4月9日((株)モトヤ 活字資料館)「活版印刷見学会:モトヤ」
 4月25日(立命館大学衣笠キャンパス)「図書館を変えるウェブスケールディスカバリー」飯野勝則
 5月23日(立命館大学衣笠キャンパス)「出版統計から考える――紙の本と電子本の近未来」下村昭夫
 7月30日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版史研究の手法を討議する その7:出版研究とライフヒストリー研究――大宅壮一をめぐって」阪本博志
 9月26日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「『上方芸能』の48年――何を志してきたのか」木津川計

(12)出版アクセシビリティ研究部会 設立準備会
 3月6日(専修大学神田キャンパス)野口武悟・植村要・大塚栄一

6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。

(1)春季研究発表会(2016年5月14日,東京経済大学国分寺キャンパス)
〈研究発表〉
1.「原稿用紙の歴史」三村泰一
2.「「江戸時代の識字率は世界一」という言説の構成過程―― 一般読者向け出版と学術出版のそれぞれにかかわるアクターからの分析」清水一彦
3.「「出版の自由」と「出版の倫理」に関する一考察」栗山雅俊
4.「出版権の改正にみる流通者への権利付与のあり方」宮下義樹
〈ワークショップ〉
1.「いま,再販問題を考える」清田義昭・高須次郎・福嶋聡・和泉澤衞
2.「ジャーナリズムとしての書店業――情報の「送り手」にとっての「公平性」とは何か」塚本晴二朗・福嶋聡・笹田佳宏
3.「アカデミズムか,実務か。出版教育を考える。」清水一彦・川井良介・富川淳子
4.「出版史料のデータベース/アーカイブを考える」石川徳幸・長尾宗典・瀧川修吾・芝田正夫

(2)秋季研究発表会(2016年12月3日,関西学院大学大阪梅田キャンパス)
〈研究発表〉
1.「出版メディアとプリント・ディスアビリティ」湯浅俊彦
2.「日本におけるLL ブック出版の現状と展望」野口武悟・藤澤和子
3.「電子出版を活用した出版・図書館における多文化サービスの可能性」野木ももこ
4.「JATS の タグと タグ提案による構造化規定の国際化」中西秀彦
5.「経済雑誌『エコノミスト』にみえる大阪の経済雑誌としての性格:基礎的調査による考察」中村健
6.「江戸時代初期から寛政改革期にかけての出版規制再考――ビジュアル公共圏の萌芽状態を観察する」鎌田大資
7.「戦前期における青年の読書実態――東京の学生読書調査を中心に」張賽帥
〈ワークショップ〉
1.「出版と図書館の新たな枠組みを考える」植村八潮・野口武悟・大塚栄一
2.「出版史史料と図書館資料をつなぐための方法論」中村健・長尾宗典・磯部敦・鈴木広光
3.「出版と読書の過去・現在・未来――若年層向け小説をめぐる動向から考える」田島悠来・中川裕美・山中智省・村木美紀

7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,第46号(A5判,144頁,700部,定価:本体2,600円+税)を2016年4月に発行し,引き続き第47号(A5判,180頁,700部,定価:本体2,600円+税)の編集をおこない2017年4月に発行予定である。

8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時おこなうとともに,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集にあたり,次の各号を発行した。
 第141号=28頁,2016年4月5日(700部)
 第142号=36頁,2016年10月31日(700部)
 また,当学会の公式ウェブサイトの充実をはかり,情報発信をおこなった。

9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。

10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,第17回国際出版研究フォーラムの開催にあたり,中国編輯学会との連絡にあたった。

11.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第38回日本出版学会賞の審査にあたった。
 また,『出版研究』に掲載された論文を対象にした「清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)」を新設した。

12.日本出版学会賞受賞記念講演会

 2017年3月10日(専修大学神田キャンパス)「編集を批評するということ」大澤聡

13.役員(2018年度総会まで)

会長=植村八潮
副会長=塚本晴二朗 星野渉 湯浅俊彦
理事=浅岡邦雄 石川徳幸 和泉澤衞(2017年3月~) 磯部敦 茨木正治 今村成夫 掛野剛史 梶原治樹(事務局次長) 古山悟由 柴野京子 清水一彦 志村耕一 下村昭夫(~2017年3月) 玉川博章 富川淳子(~2017年3月) 中川裕美 中西秀彦 中町英樹 中村幹(事務局長) 中村健 橋元博樹 樋口清一 村木美紀 諸橋泰樹 山崎隆広 山田健太 王萍
監事=菊池明郎 清田義昭

14.委員会メンバー

 (◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎星野渉 植村八潮 梶原治樹 柴野京子 塚本晴二朗 中村幹 湯浅俊彦
(2)調査研究委員会=◎塚本晴二朗 植村八潮 梶原治樹 柴野京子 中村幹 星野渉 湯浅俊彦
  学術出版研究部会=◎山崎隆広 ○橋元博樹
  雑誌研究部会=◎玉川博章 ○石川徳幸 ○吉田則昭
  出版技術研究部会=◎田中公子 ○中村幹
  出版教育研究部会=◎清水一彦 ○鈴木親彦
  出版経営研究部会=◎橋元博樹 ○星野渉
  出版史研究部会=◎柴野京子 ○石川徳幸
  出版デジタル研究部会=◎梶原治樹 ○矢口博之
  出版編集研究部会=◎富川淳子
  出版法制研究部会=◎樋口清一 ○瀧川修吾
  出版流通研究部会=◎星野渉 ○岡部友春 ○鈴木親彦
  関西部会=◎湯浅俊彦 磯部敦 中西秀彦 中村健 村木美紀
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 ○茨木正治 稲田隆 上田宙 掛野剛史 末包愛 玉川博章 山崎隆広 吉田拓歩 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 古山悟由 田中公子 橋元博樹
(5)関西委員会=◎中西秀彦 磯部敦 中村健 村木美紀 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎樋口清一 塚本晴二朗 山田健太 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎植村八潮 石川徳幸 今村成夫 芝田正夫 清水一彦 鈴木広光 吉田則昭
(8)創立50周年記念準備委員会=◎星野渉