第2回「南涯安春根出版著述賞」箕輪成男氏に  吉田公彦 (会報109号 2003年3月)

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第2回「南涯安春根出版著述賞」箕輪成男氏に  (会報109号 2003年3月)

吉田公彦

 去る1月22日,韓国出版学会初代会長・安春根氏の10周忌を記念して「南涯安春根先生逝去10周忌追慕学術祭」がソウルで開催され本学会関係からは箕輪成男,吉田公彦の両会員が参加した.当日は午前中,韓国出版学会尹炯斗会長はじめ関係者一同小雪舞う中をソウル郊外に墓参,午後からは市中心に戻りプレスセンターに設けられたシンポジュウム会場で約80名の出席者を前に箕輪会員が「南涯と出版学」と題して基調報告を行い,それをめぐり李鍾國副会長はじめ数名の討論参加者がそれぞれの立場から故人の業績に対してコメントを述べた.ついで第2回「南涯出版著述賞」の授賞式に移り,李正春委員長から箕輪会員に授与する旨の以下のような審査経過が報告され,尹会長より賞牌が贈られた.
 ちなみに本賞を日本人研究者が受賞するのは2回目で,第1回は1昨年秋,清水英夫会員が受賞している.

審 査 経 緯

 「南涯安春根出版著述賞」は,韓国の著名な出版学者である故南涯安春根(1927~1993)先生が生涯をかけて追求された出版学研究と先生が残された業績を讃えるために,出版学分野において研究・著述活動に大きな功績を挙げた国内外の人士を対象に,社団法人韓国出版学会が制定した学術賞制度であります.この学術賞制度は韓国出版学会が受賞者および授賞時期など授賞と関連したすべてのことを厳重な手続きにより審議,決定いたします.
 この賞の目的は,南涯安春根先生が成し遂げた学問的業績を追慕・継承し,出版と出版学の発展を図ることにあり,出版研究を通して学問共同体に貢献し,切磋琢磨の経論を広く顕揚し称えるという趣旨をも持っております.
 本学会は以上の目的と趣旨に適合した受賞者候補を選定するために努力してまいりました.その結果,2002年11月9日,本学会の理事会で南涯安春根出版著述賞審査委員会を開き,日本の著名な出版学者である箕輪成男先生に「南涯安春根出版著述賞」を授与することを決議し,このたび,このような喜ばしい席が設けられることとなりました.
 箕輪先生は出版と出版学の本質を明らかにする研究に邁進してこられただけではなく,それを社会・経済学的方法論に接近させ,出版理論と出版の発展に関する問題を深く研究され,そういった領域において独歩的境地を開拓された学者でございます.
 我々は箕輪先生が生前の南涯先生と深い親交を築いておられ,その親交を通して同じところを指向し,追求されたことについて共感を表す所存でございます.南涯先生と箕輪先生は,早くからそれぞれの母国で,出版研究を領域の学問として開拓・発展させるために尽力を尽くされ,その過程で不断な研究と,著述活動を続けられました.何よりも学問への不断な精進を貫いたおふたりの努力や姿勢は,後進・後学の亀鑑となるものであると信じます.
 箕輪先生は多くの著述を発表され,とりわけ1980年代初に書かれた『情報としての出版』,『消費としての出版』,『歴史としての出版』などは,非常に注目を浴びた秀れた研究業績であります.最近発表された『出版学序説』および『パピルスが伝えた文明』などで披露されました精彩ある論議は実に画期的な成果として評価されるべきものであります.
 先生は東京大学を卒業(1950)されると同時に母校の出版会幹部として職務を始められ,それ以来4半世紀にわたって同会理事,代表を歴任されるなど,学術出版の現場を先頭で指揮してこられました.ひいては日本の大学出版部協会を創設(1963)され,初代幹事長として同協会発展のために務め,ついでに世界大学出版部の結集体である国際出版学術協会の初代会長(1976)として選任され職務を果たされるなど,学術出版の国際的発展に大きく貢献されました.その延長線上で先生は国際連合大学が創設された当時,同大学の学術情報局長と出版部長として就任(1976)され,以降10年間全世界を対象とした学術情報伝達網を組織するために尽力を尽くされました.
 以上のすべての業績は,出版と出版学研究における先生の一貫した追及によって積み立てられた結果であります.先生のこのような精進は,日本出版学会会長として,そして愛知学院大学と神奈川大学の教授として学問研究と後進・後学の育成に長い年月務めてこられた道筋の上に具体的に現れておられます.先生のこのような路程は弱冠以来50年にわたっており,大学での学術出版専門経営者として,国際出版運動家として,出版教育者として,そして著述家としてすばらしい情熱をみせてくださいました.先生の学問的関心は,出版の社会・経済的役割とその国際的交流に基づき出版文化と出版文明の望ましい方向を模索することに力を注いでおられます.出版と出版学の発展,さらには出版活動の世界を開くために最善を尽くされたのであります.
 このような活動に対し,本学会は箕輪成男先生が築いてこられた研究・著述業績を高く評価し,南涯安春根出版著述賞審査委員会の一致した決議で先生を「第2回南涯安春根出版著述賞」受賞者として選定するにいたりました.
 我々は箕輪先生に心から祝賀の言葉を捧げると同時に,このような賞を授賞することができたこの喜びを国内外の学問共同体と出版研究者,出版産業界の皆様と分かち合いたいと思う所存であります.ありがとうございました.

2003年1月22日
社団法人 韓国出版学会
南涯安春根出版著述賞審査委員会
李 正 春(Moon Youn Ju 訳)