シンポジウム「震災と出版」パネラー発言2 「出版業界における東日本大震災の影響とその対策 書店の被災」 星野 渉 (2011年5月14日)

出版業界における東日本大震災の影響とその対策
書店の被災

 星野 渉

 東日本大震災によって何らかの被害を受けた書店は787店,1都1道14県に及んでいる。被災書店での損害額は商品だけで約17億円(取次正味金額)とみられている。被災商品の返品受け入れについて交渉が行われたが,取次側は全商品の通常正味での入帳処理を求めたが,出版社側は「双方が負担を背負う」ことを求めた。

 また,新学期直前だったことから,供給前の教科書が大きな被害を被った。被害額は50万4399冊,2億5000万円に達した。
 東日本の交通機関は大きな被害を被ったが,同時に発生したガソリン不足の影響で,取次各社は全国での「隔日配送」や被災地域への配送中止など,かつてない非常時対応を実施した。
 さらに,出版用塗工紙の生産拠点である日本製紙の石巻工場(宮城県)が,津波によって工場構内に土砂が堆積し,製品在庫がほぼ全損する被害を受けた。また,三菱製紙の八戸工場(青森県)も津波の影響で操業を停止した。
 実際に大手出版社の雑誌などで,用紙の手配がつかないなどの理由から休刊,発売日変更が相次ぎ,出版科学研究所によると,3月は発売延期が360誌,発売中止が30誌という影響があった。
 主要出版業界団体は震災後直ちに対策を検討するため,対策組織を設置。さらに業界を横断した「〈大震災〉出版対策本部」(委員長=相賀昌宏書協理事長)を立ち上げた。
 今回の震災の影響については,今後の出版産業をどのように変えていくのかという視点からの検証が必要だと考えられる。

●当日配布レジュメより(抜粋)
○業界団体等の対応
・日本書籍出版協会「大震災対策特別委員会」(委員長=菊池明郎副理事長)
・日本雑誌協会「緊急対策連絡会議」(委員長=早川三雄氏・小学館)
・日本書店商業組合連合会「東北地方太平洋沖地震日書連対策本部」(本部長=大橋信夫会長)
○〈大震災〉出版対策本部
・日本書籍出版協会,日本雑誌協会,日本出版クラブが設立
・日本出版取次協会と日本書店商業組合連合会を加えた5団体で「出版対策本部連絡協議会」を設置
 ・目的=「読書環境の復活」「販売環境の復活」「人々の心の復活」
 ・活動=ウェブ「〈大震災〉出版対策センター」で情報提供,「図書寄贈プロジェクト」,「復興支援基金」