書誌学入門――和本を調べる技術 大沼晴暉 (2015年10月30日)

■出版技術・デジタル研究部会 発表要旨(2015年10月30日)

書誌学入門――和本を調べる技術

大沼晴暉
(元慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授(書誌学))

 「本」に類する語として,書物,図書,版などがあり,さらに文書,記録,楽譜,地図,絵画,暦,看板などの語もある。これらには,内容の性質や用途,置かれる場所などによる違いがある。
 書物の構成要素を列挙すると,表紙(外題),見返し,前付,内題(大題),版式(書式),尾題,後付,奥付・刊記,裏表紙という順になり,これは対称形を成している。
 その和装本の表紙には様々な色が用いられ,縁起が良い赤の系統は丹表紙(赤本など),茶系では栗皮色(くぬぎ染め,焦茶),柴,香色(薄茶),青は縹色(つゆ草など,青本),これが褪色すると黄色になって黄表紙となり,黒い表紙の黒本は浄瑠璃を脚色したもの等々,表紙の色を目にするだけで内容傾向がわかる仕組みである。
 文章の表記方法は漢文,カタカナ(外来語),ひらがなの使用により,読者対象がおのずと決まる。
 判型の種類も含めて,和装本はこのように,装いのスタイルに定型があって,内容と密接な関わりがある。

※以上のような内容について,参加者と講師が活発に対話しながら,和本についての見識を深めた。参加者16名(会員4名,非会員12名),会場は中央区立ハイテクセンター(八丁堀)。
(文責:田中 栞)