会長挨拶

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 去る5月14日に東京経済大学で開催された日本出版学会総会において、第11代会長に選ばれました。会長としてさらに汗をかき学会の発展につくせ、という声が、空耳のように聞こえてくるようです。微力ながら学会の発展に貢献できればと思う次第です。

 日本出版学会は、1969年に設立され、2019年に創立50周年を迎えます。「出版研究の基本態勢をととのえ、もって出版文化の向上に資したい」とした有志7名による呼びかけから学会が誕生しました。出版学会の設立は、当時の熱を帯びた出版状況に対し、少し引いた視点で、出版文化、出版産業を客体化しようとする試みであり、時代の希求であったともいえます。そうであれば、今日の出版状況において、出版学会の果たす役割も大きいといわねばなりません。
 もちろんそれは、出版不況の打開策とか、電子書籍市場の拡大といった、ビジネスに直結するような提案をするというような話しではありません。出版研究が出版産業の、ひいては社会の進歩に役立つのは、結果の応用にすぎません。もちろん、研究は単なる趣味であってはならず、究極においては出版の進歩・発展に役立つものです。ただし、少なくとも、そこにおける「出版」は、既存のメディアや産業構造を指すだけでなく、常に再定義が求められます。また、出版研究の成果をヒントにして実利に役立てることは、従来からの出版者、取次会社、書店経営者だけでなく、新規参入を含むすべての人に開かれています。

 今では、正会員数312名、賛助会員数41社となり、学会論文誌『出版研究』は46号に達しました。研究発表会は、首都圏で春季、関西圏で秋季の2回の大会が毎年開催されています。昨年から、ワークショップ形式を取り入れ、会員相互の自由な討議を行うようになりました。
 出版メディアを研究対象とする学問領域が広がり,デジタルアーカイブなど研究環境も大きく変わった今、出版研究の「ハブ」となるべく,新たな課題に向けた取り組みについて熱心な討議が日々、続いています。これらのベースとなっているのが、10を数える研究部会による日頃の研究活動です。
 また、創立10周年を記念して「日本出版学会賞」を設け、広く学会内外の優れた出版研究の成果物を対象に授与して参りました。さらに、今年の総会で、新たに清水英夫第4代会長の功績を顕彰して「清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)」を設けることが決まりました。出版学会賞が、結果的に単著を中心に選ばれることに対し、まだ著作を持たない若手研究者を励ます目的を企図しています。
 「国際出版研究フォーラム」は、出版学の国際交流を目的として、1984年に第1回が開催され、現在まで16回を数えています。3年後の2019年に日本開催となり、50周年事業の一つとして取り組まれることになるでしょう。今年から周年実行委員会を立ち上げ、開催資金のための募金活動の準備を始めます。少し早いお願いになりますが、日本での開催を成功するために、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 インターネットとデジタル技術によるメディアの変容は、グーテンベルクによる金属活字印刷術の発明に匹敵する、あるいはそれを凌駕するとまでいわれています。当然ながら、出版を含むメディア研究の対象も分析手法も理論も大きな変化期にあります。
 メディアが激変し、人々が出版再編に取り組む中で、出版学会もまた革新していかなければなりません。数年後に迫る50周年にむけて、よりいっそう活発な出版研究を行い、出版の将来像に対する示唆に富む研究成果を披露できればと思っています。

植村八潮
日本出版学会会長・専修大学教授