《日本出版学会賞受賞記念講演会》「編集を批評するということ」(2017年3月10日)

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《日本出版学会賞受賞記念講演会》

 

 

「編集を批評するということ」

 

 

大澤 聡(近畿大学)

37回(2015年度)日本出版学会賞奨励賞

 

 

alt 日本出版学会賞は、学会設立10周年記念事業の一環として設けられたもので、1979年度の第1回からすでに37回を数えるに至っている。今年度より、これらのすぐれた出版研究の成果を広く共有することを目的として、受賞者の記念講演会を開催することとした。

2015年度(第37回)は本賞の該当がなく、奨励賞を受賞した大澤聡会員の単独講演となった。総合雑誌の論壇時評・文芸時評を分析対象とし、その形式に着目した受賞作は「雑誌研究に新たな地平を開いた」として高く評価されたものである。

 講演では、まず大澤氏が射程とする研究・活動領域について、コンテンツ―メディア、過去―現在、という座標軸が示され、それぞれ、(1)メディア・現在→メディア批評、(2)メディア・過去→メディア史研究、(3)コンテンツ・過去→近代文学・思想等のテキスト研究、(4)コンテンツ・現在→文芸批評、というアウトプットから説明があった。このうち受賞作の『批評メディア論』は第3象限に位置づけられるが、同書は博士論文の第1部であり、第2部では第4象限のコンテンツを扱っている。

 本論の解説においては、3つのキーワードとして「出版大衆化」「固有名消費」「批評的編集」をあげ、雑誌とそのコンテンツが、商品化するメディアとしていかに編成されていくか、そこにおいて戦前期の「出版」というメディアがどれほど多くの要素を引き込むポテンシャルをもっていたかなど、現代的なテーマにつながる視点での議論が、数多く展開された。最後に今後の展望として、日本の座標軸をつなぐアプローチとしての読者―オーディエンス研究、資料アーカイブの重要性について言及があった。参加者は12名(会員9名、一般3名)ながら熱心な聴講者を迎え、講演後には積極的な質疑が行われた。

 

日時: 2017310日(金)1830分~2030

会場: 専修大学神田キャンパス 2号館208教室

(文責:柴野京子)