《ワークショップ》 雑誌リテラシーと「MIE(教育に雑誌を)」運動を考える (2018年5月 春季研究発表会)

《ワークショップ》 雑誌リテラシーと「MIE(教育に雑誌を)」運動を考える

司会者:
  植村八潮 (専修大学)

問題提起者:
  梶原治樹 (日本雑誌協会・扶桑社)

討論者:
  設楽敬一 (全国学校図書館協議会理事長)
  野口武悟 (専修大学)
  阿部圭介 (日本新聞協会)

 はじめに司会の植村八潮会員(専修大学)より企画趣旨が述べられた.雑誌は,世の中の多様な情報をパッケージ化したメディアであり,文芸や科学,スポーツなどの専門知識と出会う重要なメディアである.しかし,メディア環境の変化により,子供たちの雑誌不読率が高まっている.「朝の読書運動」や「NIE(教育に新聞を)」運動など,一定の効果を上げているメディアリテラシー活動を参考に,雑誌作りコンクールなど,学校教育の中に雑誌を取り入れる活動についての可能性を議論すると発言があった.
 続いて,梶原治樹会員(日本雑誌協会・扶桑社),設楽敬一全国学校図書館協議会理事長(非会員),野口武悟会員(専修大学),阿部圭介会員(日本新聞協会)の4人から問題提起がなされた.
 梶原会員は2017年には雑誌販売額が過去最大の落ち込み,20年間で市場が半分に縮小したことなど,主に雑誌の現状について報告した.
 設楽氏は「学校図書館と子どもの読書の現状について」と題し,全国の小中高生を対象にした「第63回学校読書調査」をもとに報告した.雑誌の不読率が小学生でも高まっており,1カ月間に雑誌を1冊も読まない割合(不読率)が,小中高とも過去最高を更新したこと.雑誌の不読率は90年代後半から上昇しつつあったが,中高生で初めて60%に達し,小学生もほぼ半数となったこと.スマートフォンの普及やメディア環境の変化により,雑誌に触れる機会のない子供が増えていると考えられることとした.一方,書籍では,90年代末に中学生の不読率は50%前後であったものが,2000年代前半に15%前後まで低下している.この背景として2001年の「子どもの読書活動の推進に関する法律」制定があり,「基本的な計画」などの施策により「朝の読書運動」が定着したことも,読書回復の要因と考えられる,とのことだった.
 野口会員は,「学校教育における学校図書館と雑誌の可能性について」と題し,2017年,2018年に公示された学習指導要領では,学校図書館や新聞の利用について言及があるが,雑誌に関する言及は一切ないとした上で,図書館や新聞について整備が進む一方で,雑誌を教材として使用するという視点が抜けており,学校図書館で雑誌をどう取り扱っているのか調査する必要があると提言した.
 阿部会員は,新聞業界が一丸となって取り組んできたNIE(新聞を教育に)活動について報告した.同活動によって,全国に実践指定校を設けて新聞提供を行い,調査・教育実践の研究報告会として全国大会などのイベントを行っており,また,文部科学省第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」では,計画的な図書の更新とともに,学校図書館への新聞配備,なかでも高校への「複数紙」配備に約50億円の予算が新たに確保されているとした.
 引き続き,参加者を交え意見交換を行った.主な質問と応答は以下の通りである.

「雑誌を教材としてどのように利用していくのか」
 学校図書館に雑誌を入れるのであれば,当然のことながら,教育という観点から雑誌を選ぶことになる.その際,学校図書館に入れるべき雑誌の選定基準はどのように考えたらよいか知見を重ねる必要がある.一例をあげれば,図書ではライトノベルが生徒に人気であるが,学校図書館は教育の場であるという見方から生徒の要望よりも教員によって選書する意向が強い.また,ライトノベルでは読解力がつかないとした意見から,一部では選書に消極的である.新聞は読解力をつけるために教材として使用するとされているが,雑誌を授業でどのように使うのか検討が必要だろう.児童生徒が雑誌を読む力を育てることで,将来の読者へと成長させることが期待できる.

「教材として使う雑誌の選定基準はあるのか」
 雑誌には,思想的な右寄り,左寄りといった,様々な観点でのバイアスがある.雑誌を教材として使う際,なるべくバイアスがない雑誌を選ぶことになるのか.学校図書館に入れる雑誌の選定基準は,今の時点ではないといってよい.

「雑誌のパッケージ」
 児童生徒には雑誌が「雑」たるコンテンツ,多岐にわたる話題のパッケージという理解がない.そのため,目次やバックナンバーから目指す情報を探すというスキルがない.今の生徒や学生は,スマートフォンで関心のあるニュース記事のみを読む習慣がついている.記事だけではなく,パッケージメディアとしての雑誌を使う力を養う必要があるだろう.デジタル情報ばかりで,紙メディアを使うリテラシーが欠如しているのではないだろうか.どちらかだけでなく,そのどちらも使える力を身につけなければならない.
 最後に,学校読書調査と同規模数の全国の学校図書館に対して,「購入雑誌のアンケート調査」を行い,8月に開催される「全国学校図書館大会」に中間報告することが発表された.また,雑誌作りコンクールや,授業内で雑誌を教材として活用する教育実践などを検討していくとした.

(文責:植村八潮)