「『在野』のアメリカ文学研究と全集出版」井上健(2023年10月13日)

■ 翻訳出版研究部会 開催報告(2023年10月13日開催)

翻訳出版研究部会 10月講演会概要
「『在野』のアメリカ文学研究と全集出版」
(本年度テーマ「翻訳全集・選集」の第4回目)

講師:井上健(東京大学名誉教授)

 
 本年度テーマ「全集・選集の翻訳」の第4回は、井上健氏(比較文学)をお招きし、「『在野』のアメリカ文学研究と全集出版」について語っていただいた。講演は、一般の日本人にアメリカ文学への眼を開かせた堺利彦訳『野生の呼声』を前史とし、1941年の三冊のアメリカ文学史、大久保康雄の『アメリカ文学史』、さらなる在野の翻訳者、翻訳研究と文学全集、世界文学全集の中のアメリカ文学、と本年度テーマの締めくくりに相応しく、翻訳と文学を俯瞰する展開となった。特に注目したいのは、アメリカ文学紹介に在野の翻訳者が活躍した経緯である。
 井上氏によれば、
・アメリカ文学の翻訳紹介は大久保康雄をはじめとする在野の翻訳者がリードした。
・それを追うように研究者の翻訳が出始めた。
・ここで読みやすさ(在野)と正確さ(研究)の対立が見られる。
・戦後の世界文学全集ブームのなかでは、編者・訳者の分担に在野と研究者の相乗り現象が見られる。
とのこと。
 今後文学全集が編まれることがあれば、在野と研究者の混在・比率、さらにこの区別が意味をなさなくなるのか、興味は尽きない。また正確さと読みやすさは、翻訳を取り上げる上で必ず出て来る問題だが、その評価基準は本委員会での検討に値するものであろう。
 
日 時:2023年10月13日(金)19:00~20:30
会 場:文京シビックホール小会議室
参加者:13名(会員6名、非会員7名)

(文責:柴田耕太郎)