少女小説ジャンルの変遷 嵯峨景子 (2017年4月28日)

■出版史研究部会 開催要旨(2017年4月28日)

少女小説ジャンルの変遷――コバルト文庫とその読者層を中心に

嵯峨景子(明治学院大学非常勤講師)

 2017年2月に『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)を上梓された嵯峨景子氏(明治学院大学非常勤講師)を迎えて、研究会を行った。発表では、著書の中からコバルト文庫を中心に、大人の作家によるジュニア向け小説から、読者に近い少女の立場(=新人賞受賞者)への転換、およびSFジャンル、ファンタジー、商品的パッケージ化、ボーイズラブなど、ジャンルとコンテンツの多様化が、レーベル(出版社)・作家・読者の3つの方向から説明された。
 そのなかでは、少女をとりまく読みものの拡散とともにコバルトに代表されるような少女小説のパッケージが孤立し、読者が高齢化すること、その結果として「大人の女性の慰安」としての少女小説が誕生、仕事や結婚などがテーマとして扱われている現在や、ボカロ小説(初音ミクなどのボーカロイド楽曲をもとにした小説)などとの連関にも言及があった。あくまで一般書という位置づけでありながらも、詳細な調査にもとづく内容で、豊富なデータの紹介もあり、正会員8名を含む20名の参加者(男女同数)からは活発な質疑が行われた。
 あまり本格的な研究の行われてこなかった領域にあって、じゅうぶん刺激的な論点が提示されたと思う。今後は、専門である近代史の研究でのご参加も期待したい。

会場:日本大学法学部三崎町キャンパス
(文責:柴野京子)