「江戸川大学の雑誌制作教育」本多悟(2022年7月25日開催)

■ 日本出版学会 第5回 MIE研究部会 開催報告(2022年7月25日開催)

「江戸川大学の雑誌制作教育」
 本多 悟
(江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 マス・コミュニケーション学科教授)

 
 第5回のMIE(雑誌利活用教育)研究部会で、「大学での雑誌制作教育」の実例として、江戸川大学・本多から実践報告をおこなった。光文社に2021年3月まで35年間勤務し、総合週刊誌『週刊宝石』・写真週刊誌『FLASH』・女性週刊誌『女性自身』・ムック・単行本の編集、広告営業、広報、書籍・雑誌のプロモーションなど出版ビジネスにかかわるさまざまな業務に携わってきた。「出版社での経験をどのように大学での実践教育に生かしているのか」も、今回の発表に求められたテーマであった。指導教員を務める専門ゼミナールに所属するマス・コミュニケーション学科4年の松本響也さんにも同席してもらい、学生の立場で発言してもらった。

 江戸川大学での雑誌制作教育は、2011年4月に着任した元マガジンハウスの清水一彦会員(現・文教大学 情報学部 メディア表現学科 教授)が2012年度より導入し、「専門ゼミナール」の授業で実施されてきた。毎年、3年次4月より雑誌制作を開始し、11月の学園祭で発表するのが基本スケジュールである。雑誌の基本サイズはA4判で、中綴じ、64ページ、全4色となる。大学内の教室を「DTPルーム」としており、DTP 機材は、iMac 27inch×8、プリンター(OKI マイクロライン C930)。アプリケーションソフトとして、InDesign、Photoshop、illustratorなどを使用している。中綴じ用のロングステープラー、ディスクカッターを常備し、学内で印刷・製本までおこなう。

 今回は、2021年度の「専門ゼミナール」での雑誌制作教育について紹介したが、一言でいえば、「コロナ禍と一部ゼミ生のモチベーションの低さに翻弄された新米教員の顛末報告」となった。2021年4月20日の第1回授業から、雑誌『地と人と』がようやく完成した2022年1月25日の第28回授業までの制作過程を、本多がゼミ生に配布したプリントや松本さんの「企画書」「ラフレイアウト」「取材依頼書」「原稿」「レイアウト」「完成したページ」なども紹介する形で公開した。もちろん、プランの立て方や取材方法の指導、原稿・レイアウトの修正指示、校閲といった部分では、出版社での編集者としての経験、知識を生かすことができたが、大学教員としての経験の少なさから反省すべき点が多々あった。当初は12月上旬での完成を目指したものの、スケジュールが1カ月半以上後ろ倒しとなったことも、反省点のひとつだ。2021年度の反省点を、①ゼミ生のモチベーションの違いを最後まで解消できなかった ②コロナ禍の影響で、オンライン取材中心に。進行が大幅に遅延 ③本多のInDesignについての知識、経験が不足していた、の3つにまとめたが、いずれも私の準備不足、指導力不足が原因だったといえる。すでに2022年4月より、2022年度の雑誌制作教育を開始しているが、「2021年度の反省から、2022年度本多ゼミで改善したこと」についても詳細を紹介した。また、「2023年度以降のMIEに向けての期待と懸念」、さらに僭越ながら、「他校へのMIE普及に向けて本多からの提案」も述べた。

 発表後、参加者の皆様から質問そして助言をいただいたが、発表のなかで紹介した「普段から雑誌を読んでいる学生が少なく、基本的な構造、レイアウトについてのイメージを持っていなかった」という事実に、驚きの声があがったことが印象的だった。これまでのMIEは、参加者の大半が雑誌を読んでいることを前提に進められてきたと思うが、雑誌の休刊やWebでの発行への転換が相次ぐ状況を考えると、「雑誌の基本構造」を理解してもらうための時間をしっかり取ることが今後、必要不可欠になるとあらためて感じた。今回は大学生の参加者も多く、松本さんがインタビュー取材についての助言を求められるなど、学生間での情報交換ができたことも、たいへん有意義だった。

日 時: 2022年7月25日(月) 午後6時30分~8時30分
開催方法: 会場での対面形式とZoomによるオンラインの同時開催
会 場: 専修大学 神田キャンパス 731教室(7号館3階)
参加者: 34名(会員19名、非会員15名。うち、オンライン参加者23名)

(文責:本多 悟)