■ 日本出版学会 第10回 MIE研究部会 開催報告
「大学でMIEを実践する意義」
第10回MIE(雑誌利活用教育)研究部会では、「大学でMIEを実践する意義」をテーマにパネルディスカッションを開催した。登壇者は、牛山佳菜代会員(目白大学)、野上勇人会員(開志専門職大学)、本多悟会員(江戸川大学)、森貴志会員(梅花女子大学)、元永純代会員(跡見学園女子大学)の5名である。司会・進行は牛山会員が務めた。
まず各登壇者より、自身の授業における雑誌づくりの位置づけや制作プロセスについて報告があった。
本多会員は、3年生のゼミにおいて、48~64ページの雑誌制作を実施している。取材、執筆、レイアウト、印刷までを学生が担い、共同作業を通してチームの成熟を図っている点が特徴である。
野上会員は、40人規模の授業で企画立案から取材、プロデザイナーとの協業までを展開している。「読者を意識すること」「アイディアを出すこと」を重視し、グループワークにおける心理的安全性にも配慮した指導を行っている。
森会員は3年生のゼミにおいて、学生主体の雑誌編集を実施し、プロのデザイナーへの依頼も行っている。自由で楽しい制作環境を整えつつ、質には妥協しない姿勢を強調した。
元永会員は専門科目において、学科報としての雑誌制作を指導し、20~30名の学生が制作に携わっている。学科の学びを活かし、将来目指す仕事を特集する構成とすることで、キャリア教育と結びつけている。
牛山会員は、地域活性化をテーマとするゼミで雑誌制作を実施している。動画制作も含め、企画段階に十分な時間をかけ、メディアを通じた地域発信に取り組んでいる。
学生数、制作体制、プロとの協業の有無など実践形態は多様であるが、ディスカッションではその教育的意義が議論された。編集技術の習得にとどまらず、企画力・文章力の向上、社会に発信する出版物を制作することによる責任感の涵養などが挙げられた。さらに、電話や取材依頼状の作成、企画意図の説明といった学外とのやり取りを通して、思考力、主体性、チームワーク、倫理観、レジリエンスなど多面的な成長が促されることが共有された。共通していたのは、雑誌づくりを単なる編集技能教育としてではなく、総合的な人間的成長を促す教育実践として位置づけている点であった。
質疑応答では、「雑誌に親しみの薄い学生に対し、どのように雑誌の読み方を指導しているか」との質問が出された。登壇者からは、書店や図書館でのフィールドワーク、誌面構成やコンテンツ分析の実施などの具体例が紹介された。
総評として、日本出版学会会長の清水一彦氏(文教大学)は、MIEの意義について「良き社会人を育てる訓練であり、最後までやり抜く力を養う人間教育につながっている。自ら制作したという手応えが自信を生み、雑誌は教育にとって優れた教材である」と述べた。
本研究部会では、雑誌づくりが「主体的・対話的で深い学び」を志向するアクティブ・ラーニングの実践として有効であり、社会的実践力や人間的成長と結びつくことを確認した。一方で、今後MIEを広げていくためには、一定の指導指針や共有可能な実践モデルの整備が求められる。また、雑誌に触れる機会の減少を踏まえ、学校図書館や専門図書館との連携を通じて雑誌に親しむ環境を整え、そこから雑誌利活用・雑誌づくりへと接続する仕組みづくりが課題として示された。
日 時:2026年1月29日(木) 17:00~18:30
開催方法:会場での対面形式とZoomによるオンラインの同時開催
会 場:跡見学園女子大学 文京キャンパス 2301教室
参加者: 17名(うち会員14名。オンライン参加者7名)
(文責:元永純代)
