「音楽データへの「インターフェース」としての『コンピュータ・ミュージックマガジン』」日高良祐(2025年9月11日)

■日本出版学会 雑誌研究部会 開催報告

「音楽データへの「インターフェース」としての『コンピュータ・ミュージックマガジン』」
 報告者:日高良祐(京都女子大学)

 
 「音楽データへの「インターフェース」としての『コンピュータ・ミュージックマガジン』」と題し、日高良祐氏に、DTM(デスクトップミュージック)雑誌を題材とした研究についての報告を頂き、その内容が収録されている永田・近藤編『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)の研究動向を踏まえて、読者による雑誌の利用や雑誌の付録という観点からの雑誌研究のあり方について議論をした。
 まず、日高氏は『コンピュータ・ミュージックマガジン』という雑誌とその付録ディスクが、1990年代のDTM実践における重要なインターフェースとして機能したことを発表した。雑誌は、DTMソフトウェアやMIDIデータを収録した付録ディスクと組み合わせて、ユーザーがパソコンと電子楽器のMIDI音源を接続して音楽データを演奏する環境を構築していた。さらに、現在の標準化されたコンピューターエコシステムとの比較をしながら、当時の技術的非互換性による各社のソフトウェアやハードウェアの相互運用の制限など分析の前提となる1990年代のDTM環境の特徴を示した上で、同誌の付録ディスクが、読者の投稿を掲載し、MIDIデータを共有する場として活用されていたことなど、当時の読者による雑誌利用の実態を考察した。
 以上のような報告の後に、『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)の概要や編集意図について、編者の一人であり会場参加者の永田大輔氏より説明があった。
 最後に質疑応答がなされ、同時代の他の音楽雑誌との関係性や、ファイル共有の歴史を踏まえ、パソコン通信時代のMIDIデータのやり取りなどについても議論があった。さらに、図書館では、付録が捨てられてしまったり、保存されていたとしてもフロッピーディスク内のデータへのアクセスが困難であるなどの指摘を踏まえ、図書館やアーカイブ関係者に付録の重要性を理解してもらうためにも、研究をより積極的に行うべきというコメントなどが交わされた。
 
日 時: 2025年9月11日(木) 午後7時00分~9時00分
会 場: 神保町Research&Reading Roomならびにオンラインのハイブリッド開催
参加者: 14名