「出版流通研究」の過去・現在・未来 下村昭夫・清田義昭 (2018年1月12日開催)

■ 出版流通研究部会 開催要旨(2018年1月12日開催)

 「出版流通研究」の過去・現在・未来
 ――出版産業・出版流通問題の何を考えてきたのか

 下村昭夫(出版メディアパル編集長)
 清田義昭(出版ニュース社代表)

 
下村昭夫
 これまでの出版学会報を調査し、出版流通研究部会がどのような問題を取り上げてきたかをまとめた。部会制度そのものが誕生したのは日本出版学会の成立から20年ほど経った1992年である。「歴史部会」「雑誌部会」「出版教育部会」「現状・政策部会」「法制・出版の自由部会」「出版製作部会」の六部会からスタートしたとある。
 出版流通部会のルーツは「現状・政策部会」だといえる。1996年に「現状・政策部会」を発展的に解消し「流通研究部会」が誕生した。初代幹事は清田会員と丸田会員だった。これ以降2017年10月12日の松井祐輔氏による報告までを資料としてまとめてある。

 下村会員が作成した、出版流通研究部会の25年分の内容をまとめた資料「出版流通研究の過去・現在・未来」は以下からダウンロードできます。

清田義昭
 下村会員の資料で、出版流通部会の流れがよく分かる。自分の担当は2017年の出版界・読書界の10大ニュース振り返りだが、まずは出版流通部会の役割について考えを述べたい。
 そもそも出版学会で出版流通について考えなければならない理由はなんなのか。部会制度が立ち上がった頃から「出版の自由とは出版流通の自由なくしては存在しない」と考えてきた。出版流通研究部会では、業界の状況を見つつ、大事なタイミングでいつも出版流通の本質を議論してきたと思う。中心となるのは一つは出版の自由であり、一つは再販制度である。
 この再販制度の問題は未だに出版流通研究部会の基本的なところにあるのではないかと考えている。業界全体が再販制度護持の動きをとっていた時も、本質的に必要か必要でないかという正面切った議論は行われてこなかった。自分自身は再販制度を守るべきだと考えていたが、そうでない人もいた。意見の相違はともかくとして、賛成反対にかかわらず本気での議論がないと解決の糸口はない。現在、再び再販制度不要論が広がっていることはよくわかっているが、やはり個別に意見が述べられるだけで、本質的に大きな議論ができない、言わない、言えないという状況は実は変わっていない。
 出版学会、特に部会はこういった議論ができる場になると考えてきた。これからも出版流通部会でしかできないこと、出版学会でしかできないことを意識してやってほしい。再販制度を始めとして、良い解決方法は本気の議論無くしては生まれない。ぜひ積極的に、議論ができる場を作っていってほしい。

 清田会員の取り上げた「出版界・読書界の10大ニュース」は『出版ニュース』12月下旬号に特集として掲載されています。ぜひご一読下さい。
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 これまで部会の中心となって支えてきた下村・清田両会員によって、出版流通研究部会の軌跡が明らかとなった。同時に出版流通研究部会に求められる「議論の場」としての役割が再度明確になった講演でもあったと思う。部会長が交代し新しい体制となった出版流通部会だが、先輩たちの積み上げてきた成果を活かし、更に活気ある「議論の場」として発展させていきたいと考えている。

日時:2018年1月12日(金)
会場:日本大学法学部三崎町キャンパス10号館3階1032講堂
参加者:24名(会員17名、一般7名)
(文責:鈴木親彦)