会長挨拶 塚本晴二朗 (会報150号 2021年4月)

会長挨拶 (会報150号 2021年4月)
塚本晴二朗
(日本出版学会会長・日本大学教授)

 
 2020年5月24日、日本出版学会初のオンライン総会におきまして、第13代会長に選出されました。コロナ禍で、会長に選出されて以来、未だに会員の皆様の前に出たことがございません。遅くなりましたが、文面にてご挨拶させていただきます。
 さて、50周年から新たな一歩を踏み出した本学会ですが、出版不況ということもあり、必ずしも順風満帆という状況ではありません。会員数は300人台の前半でほほ固まってしまいましたし、賛助会員社は毎年着実に減っています。研究発表会や各部会の研究会の出席率はかなり高いので、会員諸氏が積極的に学会活動にご参加いただいている点は、本当に誇らしいのですが、会員数が多いに越したことはありません。特に本学会は、初代会長が野間省一氏であることからもわかりますように、歴史的には業界との結びつきが極めて深かった学会です。社会科学系の学会としましては、かなり珍しい部類に入ると思います。しかし残念ながら昨今、出版業界での本学会の知名度は、必ずしも高くはないといわざるを得ません。もちろん学会ですから、出版に関わる社会現象の科学的な研究を中心とする団体であって、出版社の経営戦略や書籍の編集の仕方等ばかりを考える場ではありません。とは言いましても、出版に関わる研究の団体である以上、現場の方々と研究者の交流の場であることが、本学会にとってはとても重要なことだと私は考えています。
 そこで本年度より、二つのプロジェクトチームを立ち上げさせていただきました。一つは「産学連携」プロジェクトとしまして、出版業界人が出席してメリットを感じられる学会企画はないかを探っていこうと思います。目下のところ、2021年度春季研究発表会で出版社の経営者と意見交換ができるような、シンポジウムかワークショップの開催を目標に検討を進めています。もう一つは、『パブリッシング・スタディーズを学ぶ人のために(仮)』プロジェクトとしまして、メディアに革命的な変化が起こる中で、日本出版学会とは、どのような研究領域や業種に携わる人の、どのような活動を許容する学会なのかを再考するために、単なる抽象的な概念を考えるのではなく、日本出版学会らしく出版物の形で具体的なものを刊行(やるかどうかは別として)する方向で検討したいと思います。
 私は1期限りの会長のつもりです。それだけに、悔いを残さぬように精一杯本学会発展に取り組みたいと存じます。どうかご協力の程お願い申し上げます。