2022年度事業計画(2022年4月1日~2023年3月31日)

 1969年3月に設立された日本出版学会は、2019年3月に創立50周年を迎え、学術研究団体として、確固たる地位を築きつつある。デジタル・ネットワーク社会における出版メディアのあり方は劇的に変化し、出版研究の重要性はますます高まっている。出版研究が新たな段階に入っていると捉え、出版および出版学の射程を広げるとともに、原点を確認する研究活動を進める。
 そこで当学会は、従来の出版研究の諸分野の活動を以下のように継続・拡大するとともに、次の世代に対する責任を果たしたいと考えている。
 
1.研究活動の推進と充実

(1)研究部会活動の推進
 当学会の活動がその規模に比較して活発である背景には、多様な部会活動があるといえよう。今後とも会員の期待に応えるべく、さらに積極的な部会活動がおこなわれるように努力したい。

(2)研究発表会の拡充
 春季および秋季研究発表会において積極的な発表が続いており、活発な議論がおこなわれている。また時代の研究課題に応えるシンポジウム、ワークショップの企画や、基調講演もあり、毎回、多数の参加者を数えている。今後とも、学術的水準向上の観点から、研究発表会をより充実させるため、会員の積極的な発表や会員間の討論の場を増やしていきたい。

(3)学会誌の発行
 『出版研究』第53号の企画・編集を進め、年度内の発行を予定する。
 
2.研究活動のネットワークの拡大

 1984年10月に最初の国際出版研究フォーラム(IFPS)が韓国ソウルで開催された。以来、36年あまりの間に我々は様々な交流を通じて、より内容を深めた議論をおこなう段階に到達している。IFPSの継続運営や海外在住会員との恒常的な連携、また部会活動を通じた国内の研究者間のネットワークも拡大している。
 
3.会勢と財政の充実

 当学会は当初66名の発起人によって設立されたが、現在、会員数は約320に至った。しかし、学術研究団体としては決して多い数ではなく、その社会的使命を果たすためには、より多くの会員を擁することが必要と思われる。日常の部会活動や各種の刊行物を通じて、会員の獲得、会勢の充実を期したいと考えている。
 また、学会財政は、長期にわたって出版産業の経済活動が停滞していることも要因となって、厳しい状況にある。ここ数年の経費節減の取り組みによって、現在は均衡を保っているものの、さらなる経費節減を進めている。
 
4.広報活動の充実

(1)『日本出版学会会報』
 本年においては2号の発行を予定し、内容の充実を図る。

(2)ウェブサイトの拡充
 ウェブサイトの情報発信力を高め、会員間の情報交換を密にする。また会報との連動によって学会の公知化に資することとする。
 
5.日本出版学会賞の審査・授与

 学会創立10周年を記念して創設された日本出版学会賞については、その後、毎年継続されており、本年も審査・授与をおこなう。
 また、『出版研究』掲載論文を対象に2016年度に新設した「清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)」は、隔年審査をしており、2022年度は審査・授与をおこなう。
 
6.『出版研究』『会報』の電子化

 創立50 周年事業として開始した『出版研究』及び『日本出版学会会報』の電子化を継続する。
 
7.『パブリッシング・スタディーズ』プロジェクト

 プロジェクト自体は終了したが、日本出版学会とは、いかなる学会なのかを明確にするための出版物を刊行しよう、という目的を果たすべく、今後『パブリッシング・スタディーズ』をたたき台として、デジタル時代の日本出版学会のあり方を模索していく。また学会の広報としての機能も期待される。
 
8.「産学連携」プロジェクト

 春季研究発表会での特別講演を踏まえて、出版文化産業振興財団との交流を具体化していく。また、産学連携を担当する理事2名を置くこととなった。これにより「産学連携」は、期間限定のプロジェクトではなく、日本出版学会が常に検討するべき事項となった。
 
9.出版学研究隣接学会・団体等への研究・活動協力

 NPO法人本の学校主催によるシンポジウムへの協力など、隣接する学会・団体との交流を促進し、相互に研究活動を協力する。