「北京オリンピックと本の世界」  王 萍 (会報122号 2008年10月)

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「北京オリンピックと本の世界」= 2008年の北京の夏  (会報122号 2008年10月)

  王 萍


 7 月末,ある研究会の現地インタビューの事前調査のため,3 年ぶりに中国に帰りました.飛行機を降りて,目の前に広々とした新北京国際空港の巨大さに驚きました.この中国の入り口では,すでに五輪歓迎のムードを感じました.到着ロビーに五輪選手専用のエスカレータが用意され,市内中心部につなぐ高速道路も五輪ロゴで塗られた専用道(一般車両禁止)を設けられ,所々「ようこそ,2008 北京へ」と書いた横断幕を目に飛びつく.これから第29 回オリンピック競技大会が北京で開幕だなと感じさせました.

北京国際空港のオリンピックシンボルマーク

 8 月8 日の開会式はすごかった.テレビの視聴率は平均68.8%,ある大都市天津ではなんと97%という驚異的数字とか.
そういえば,息子がある日熱が出て,町の一番大きな病院に診に行きましたらば,受付の人がテレビに釘付け競技に夢中過ぎで,直接に小児科にいくように言われました.そして小児科の先生が苦笑いしながら,息子を診てくれました.
 こんな北京オリンピックの熱狂ぶりのなか,出版はどうだったのかを知るために,地元や山西省の首都太原市,そして北京の大型書店を覗いて行きました.まず地元の書店ですが,新華書店の系列で,店内は昔より明るくて,整然とした印象でした.太原市の比較的大きいな書店「雅爾」が,入り口の近くに,五輪をテーマとした売り場を設けられ,大勢な人々が本を手に入れ,熱心に立ち読みしていました.他に外国語や児童書コーナーも賑やかでした.
 8 月下旬本場の取材のため上京した.こっちの書店でも同じ光景に遭遇した.北京西単図書大厦の一階で,5 つの『読書知奥運』(読書を通して五輪を知る)の図書展示専売コーナー設けられ,オリンピックに関する歴史・知識・楽しみ方や北京五輪の各競技場の案内や,北京市内の地図・お店・買い物.観光スポットなどの旅行書がずらりと並べて,書店に入るお客さんの目が引かれます.また中国語以外に,英語本も充実しているようです.オリンピック関連書籍はベストセラーの常連になっていると店員さんが紹介されました.この書店だけでは,五輪関係の書籍が去年の400 点から今年に1000 点以上に増え,夏休み入り以来,この展示売り場で本を読んだり求めにきたり,人々が絶えない.売上も去年の下半期より104%も増加しているという.
 この盛況ぶりは,このような大型書店だけではなく,街頭のブックスタンドにも異様な売り行きだそうです.五輪期間限定で,新聞出版業界のサービス提供の一コマとして「奥運」書・刊(書籍・新聞紙・雑誌)スタンドの運営プロジェクトを中国図書進出口(輸入・輸出)総公司が立ち上げました.
 試合開始以来,「奥運」スタンドの売上は大幅に上昇し,一日の販売総額は最初の数百元(1 万円弱)から6 万元(約95 万円)までにのぼりました.最も人気あるのは英語版『オリンピック全書』,中英文対照の地図,中国語速成教材,開幕式DVD が挙げられる.そして新聞紙は英字新聞「ChinaDaily」,「The Wall Street Journal Asia」「USA TODAY」「South China Morning Post」などもよく売れました.それ以外に英語版の『老子』『荘子』『五輪医療手帳』などの売れ行きも上々です.8 月11 日以降,電子出版物の売上が二分の一を占め,開会式と五輪主題歌のDVD が主力商品というのです.
 今回の北京五輪ではメディアの市場開発は少なくとも600 億ドルを獲得したと言われる.図書出版に関して主に3 つの視点から,第一はオリンピック関連,第二には中外文化交流関連,第三には北京歴史文化関連のものが熱い販売戦略を繰り広げている.新聞出版総署がオリンピック関連図書の出版に具体的な指針を打ち出して,五輪知識,五輪言語,五輪経済.五輪物語,五輪の理念,五輪文化という6 大類別を分けて,各出版社に自身の特徴をふまえて良書の出版促進を指導してきた.ある統計によると,2001 年以来全国各出版社が五輪関連の書籍・映像電子出版物600 点,旅行関係を加えると10000 点を刊行された.
 現在,各地・各大型書店では五輪図書の展示売り場を設け,指南書,知識類の図書が注目される.北京西単図書大,王府井書店,第三極書局,中関村図書大厦など,五輪関係の書籍がそれぞれの書店のベストセラーになっているという報道がありました.
書店の店頭を賑わすオリンピック関連書


 中でも,児童書『福娃(フーワー)』(北京五輪のキャラクター)系列が最も人気で成功を遂げたと言えます.このシリーズの版権を獲得するために,各出版社が熾烈な競争を繰り広げました.春風出版社の漫画本『福娃』がCCTV のアニメ「福娃」の原本にして改編され,200 万冊の売上を達した.また北京出版社の「福娃」関連書の発行量が260 万冊,他の出版社と違って2 ~ 8 歳の児童を対象に,読書を通じて知識を身につけることを中心にしたものが特徴です.たとえば,『福娃益智大謎宮』が子供たちにサッカー,バスケット,卓球,陸上,水泳など五輪関係の種目の知識・試合ルールを紹介するものでした.他に浙江省少児出版社の絵本『福娃オリンピック漫遊記』がTV で上映されたアニメ『福娃(フーワー)オリンピック漫遊記』を改編したものです.今年,オリンピック出版も8 月の熱い北京の波に乗って熱戦を広げられたと言えましが,これからポストオリンピックの出版がどうすべきなのかは業界にとって緊急かつ重要な課題に違いません.

(上智大学新聞学科・博士コース)



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