『JJ』とは何だったのか――ファッション誌の来し方行く末 米澤泉 (2021年5月25日開催)

■ 日本出版学会 雑誌研究部会 開催要旨 (2021年5月25日開催)

『JJ』とは何だったのか――ファッション誌の来し方行く末
米澤 泉 (甲南女子大学)

 

 2021年5月25日、甲南女子大学教授の米澤泉氏を報告者に迎え、雑誌研究部会をオンライン(Zoom)で開催した。本報告は、『an・an』(マガジンハウス)や『non-no』(集英社)とともに日本を代表するファッション誌だった『JJ』(光文社)を中心的に取りあげながら、『JJ』が育んできた独自の文化や読者共同体、さらには日本のファッション誌とファッション文化の関係性にスポットをあて、過去から現在に至るその歴史をふり返るものとなった。
 『JJ』は1975年の創刊以来、女子大生のバイブル、お嬢さまブームの立役者、ブランドファッションの牽引役、元祖モテ系赤文字雑誌として、長らく日本のファッションをリードし、女性たちに多大な影響を与えてきたが、2020年12月に事実上の休刊を迎えている。
 本報告ではその理由を、部数減少の一因と目されるSNSの台頭のみに求めず、より多角的な視点から分析を行った。具体的には、『JJ』45年の歴史で見受けられた表紙や誌面、主要読者の変遷などを通時的に追いながら、ファッションというものの位置づけや「良い結婚」等から垣間見える女性たちのライフコース、社会意識の変化が『JJ』休刊の背景にあったことを、豊富な関連資料とともに明らかにした。
 報告後の質疑応答では、参加者からZoomのチャット欄を通じて様々な質問やコメントが寄せられ、『JJ』の特集や編集方針の変化、読者である女性たちに対する影響力の大きさ、女性アイドルが表紙のほか、モデルとして登場するようになった経緯やその効果について、報告者から追加の解説が行われた。
 また、Twitter、Facebook、InstagramといったSNSの利活用によって、ファッションに関する情報を手軽に発信・入手できる昨今の状況を念頭に、かつて雑誌が担っていた役割をSNSが肩代わりできるのか、SNS全盛時代の雑誌のあり方とは何かなど、今後のファッション誌、ひいては雑誌自体の展望についても話題が及んだ。
 こうしたなか報告者からは、「生き方指南」や「ファッションの教科書」としての役割をSNSに求めるのは困難なため、SNSでカバーできない部分を雑誌の誌面でフォローすることや、趣味性の高いファッションを流行に関係なく扱う『LARME』(LARME)のような雑誌が読者を獲得していることなどを踏まえ、以上のような点に、今後の若い読者に向けたファッション誌の生き残り方があるように思われるとの見解が示された。

日時: 2021年5月25日(火) 19時00分~21時00分
会場: Zoomによるオンライン開催
参加者: 43名
(文責:山中智省)