版元ドットコム「成功」を考える  沢辺 均 (2009年6月18日)

出版流通研究部会 発表要旨 (2009年6月18日)

版元ドットコム「成功」を考える
沢辺 均

 6月18日,八木書店において「出版流通研究部会」を開催。沢辺均会員のよる『版元ドットコム「成功」を考えるが行われた。参加者は,講師を含め31名。会員12名,一般19名であった。
 版元ドットコムは2000年4月17日に本のデータベースを試験的に公開。8月6日に21社2,300タイトルでネットでの書籍販売を開始しました。以降,9年が経過して,現在148社,24,760タイトル(2009.08.31現在)の書誌情報をデータベースに掲載しています。
 とりあえず9年間つぶれずに活動を継続して来れたこと,会員社148社への成長などから,「成功」だったとして,その「成功」のポイントがどこにあったかを報告させてもらいました。
 僕が考えるポイントは,会員(出版社)の利便性と情報公開と事務作業の徹底だと考えています。
 「書誌情報や在庫情報は出版社の役割だ」とか「本の出生・死亡情報くらいなぜ出せない」といった書店などからの批判もイッパイ聞こえてました。でも,版元ドットコムは「出さねばならない」ではなく,出すことがそれぞれの出版事業にプラスをつくる,ということに重点を置きました。版元ドットコムのウエブデータベースへの登録で,商品基本情報センターへの書誌情報転送をはじめ,取次の書店向き週報や,ネット書店の在庫情報の改善(取扱いなし→○日でお届け)を実現させました。
 情報公開は現代の組織運営に不可欠のものだと考えました。版元ドットコムから会員社への情報,また会員社自身の情報公開いずれも重要なポイントです。
 版元ドットコム自身の情報公開では,決算書も,会員への公開にとどまらずネットでも公開しています。月例の組合委員会議(これは株主総会を毎月やっているようなものです)参加資格もオープン化しています。
 会員社自身の情報公開といっても,特別な情報の公開を求めている訳ではありません。会員と会友全員のメーリングリスト=MLがありますが,会員社自身の疑問・質問も,事務局へ直接の問い合わせるのではなく,このMLに投稿することで,同じような疑問をもつ会員社とその疑問とそれへのアドバイスを共有するのです。
 当初は,事務局はほとんど無償でしたが,会員数の拡大や有料事業での利益を上げることで,現在は有償にすることができています。事務局を組織し,事務局に作業部分の多くをまかせることで,円滑な運営ができるようになりました。例えば,版元ドットコムで購入された場合,その連絡をメールでその会員社に送り,会員社からお客に発送していますが,その注文と発送は事務局が経過を見ていて,発送していない会員社への連絡もしています。
 業界団体などの「事業報告」は多くの場合,その理念や目的などが中心になっているようですが,当日の報告ではむしろ運営上のポイントを中心に報告させてもらいました。
(沢辺 均)