2011年度活動報告(2011年4月~2012年3月まで)

2011年度活動報告(2011年4月~2012年3月まで)

1.概況

 1969年3月に設立された日本出版学会は,創立から40周年の節目を越え,新たな時代への歩みを進め始めた。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換を行い,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラムへの参加を継続的に行ってきた。
 これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2011年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
 学会創立45周年記念事業を実施するため,日本書籍出版協会の相賀昌宏理事長(小学館社長)を委員長とする「創立45周年記念事業委員会」を設立し,2012年10月に予定している第15回国際出版研究フォーラムの開催に向け,準備および募金活動を開始した。
 また,2011年5月14日に明治学院大学白金キャンパスで春季研究発表会を開催した。参加者は147名であり,8名の研究発表および「震災と出版」と題した特別シンポジウムが行われた。
 また,秋季研究発表会は,2011年11月5日に中京大学名古屋キャンパスで開催され,24名の参加者で,5名の研究発表と橘宗吾氏(名古屋大学出版会)による特別講演が行われた。

2.会員数

正会員       368名
賛助会員 法人    48社
       個人     1名
名誉会員         5名
    (2012年3月末日現在)

3.総会

 2011年度総会は,2011年5月14日(土),東京都港区の明治学院大学白金キャンパスにおいて133名(委任状を含む)の会員が出席,2010年度事業報告,同決算,2010年度特別会計決算,2011年度事業計画案,同予算案,2011年度特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第32回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
【日本出版学会賞】
 木村涼子『〈主婦〉の誕生――婦人雑誌と女性たちの近代』(吉川弘文館)

4.理事会

 2011年度の会務を行うため,2011年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2011年7月4日
 第2回: 2011年9月12日
 第3回: 2011年12月12日
 第4回: 2012年2月6日
 第5回: 2012年3月30日
 第6回: 2012年4月23日
 第7回: 2012年5月19日

5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(2)雑誌研究部会
 2011年5月10日(東京電機大学出版局)「長谷川時雨と慰問雑誌――『輝ク慰問文集』を中心にして」押田信子(歴史部会共催)
(3)出版技術研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(4)出版教育研究部会
 2011年8月3日(日本大学法学部)「大学における出版教育のあり方を考える――大学におけるシラバス調査から」蔡星慧
(5)出版経営研究部会
 2011年7月27日(日本出版会館)「どこへ行く? 日本の出版産業過去20年の歩みと問題群・課題」木下修,永井祥一,中町英樹,星野渉
 2012年1月25日(東京電機大学)「出版社の経営課題と出版業界の課題――出版市場縮小のなかで何をなすべきか」菊池明郎(出版流通研究部会共催)
(6)出版著作権研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(7)出版編集研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(8)出版法制研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(9)出版流通研究部会
 2011年5月20日(日本大学法学部)「再販・グーグル問題と流対協」高須次郎
 2012年1月25日(東京電機大学)「出版社の経営課題と出版業界の課題――出版市場縮小のなかで何をなすべきか」菊池明郎(出版経営研究部会共催)
 2012年3月15日(日本大学法学部)「2012年,出版産業は,いま… 「紙の本」と「電子の本」の近未来――“黒船上陸”以降の電子書籍の動向と出版流通」下村昭夫
(10)デジタル出版研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(11)歴史部会
 2011年5月10日(東京電機大学)「長谷川時雨と慰問雑誌――『輝ク慰問文集』を中心にして」押田信子(雑誌研究部会共催)
 2011年10月14日(八木書店)「武井武雄・銅版絵本『地上の祭』はいつ刊行されたか」田中栞
(12)関西部会
 2011年6月2日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「近代日本における〈主婦〉の誕生――大衆婦人雑誌の内容分析から」木村涼子
 2011年8月5日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「眺める文学文学資料を魅せる活動」岡野裕行
 2011年11月29日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版の自由と図書館の自由――『知をひらく~「図書館の自由」をもとめて』を刊行して」西河内靖泰
 2012年2月3日(大阪市立大学梅田サテライト)「スティーブ・ジョブズから何を学ぶか? ~変革者ジョブズが出版メディアに託した最後のメッセージ」高木利弘
 2012年3月7日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「学術出版の技術変遷――活版からDTPまで」中西秀彦

6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2011年5月14日,明治学院大学白金キャンパス)
〈研究発表 第1分科会〉
1.「EPUBの可能性と課題――EPUB電子雑誌『OnDeck』の試みから見えてきたもの」高木利弘
2.「2010年と2011年に実施した電子書籍に関する調査結果の比較」矢口博之・植村八潮
3.「日本のオンデマンド出版,その蹉跌と再生」中西秀彦
4.「公共図書館における電子書籍の利活用と出版業界」湯浅俊彦
5.「企業のブランド構築と書籍出版」主藤孝司
6.「出版物の著作権侵害に対する民事的救済のあり方」宮下義樹
7.「質的調査としての雑誌研究とその教育」橋本嘉代
8.「大宅壮一の記録文学」阪本博志
〈特別シンポジウム〉
「震災と出版」
(2)秋季研究発表会(2011年11月5日,中京大学名古屋キャンパス)
〈研究発表〉
1.「国立国会図書館蔵「特500」資料群に関する基礎的研究」牧 義之
2.「『サンデー毎日』特別号「小説と講談」の変遷――戦前の週刊誌考」中村 健
3.「近世出版における板木の役割――「白板」の機能」金子貴昭
4.「権利の倫理学と共通善の倫理学――出版ジャーナリズムにおけるプライバシー侵害の新しい視点」塚本晴二朗
5.「Insel出版社の100年とAnton Kippenberg(1874-1950)の果たした役割」佐藤隆司
〈特別講演〉
「大学出版の編集と学術書の信頼性」
橘宗吾(名古屋大学出版会)

7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2011年3月20日に第41号(A5判,252頁,1000部,定価2,730円〔本体2,600円+税〕を発行し,合わせて第42号の編集を行った。

8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時行うと共に,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
第130号=56頁,2011年7月25日 (700部)
第131号=16頁,2011年11月15日 (700部)
第132号=28頁,2011年2月20日 (700部)

9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。

10.国際交流委員会

 2012年度に日本での開催が決定した第15回国際出版研究フォーラムを創立45周年記念事業の一環として準備を開始した。

11.出版企画委員会

 今後の企画について検討をおこなった。

12.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第32回日本出版学会賞の審査にあたり,検討を行った。

13.フューチャーブックストアフォーラムへの参加

 日本出版インフラセンターが提案者となって採択された経済産業省の平成22年度書籍等デジタル化推進事業「書店を通じた電子出版と紙の出版物のシナジー効果の発揮」を検討するために設置された「フューチャーブックストアフォーラム」(肥田美代子会長)に,川井良介会長以下の理事が参加し,2012年3月に報告書が発表された。

14.役員(2012年度総会まで)

会長=川井良介
副会長=植村八潮 芝田正夫 諸橋泰樹
理事=浅岡邦雄 茨木正治 遠藤千舟 大和博幸 掛野剛史 菊池明郎 木下修 清田義昭 古山悟由 佐竹久仁子 志村耕一 下村昭夫 田中公子 蔡星慧 塚本晴二朗 中村幹 中村健 長谷川一 羽生紀子 樋口清一 星野渉(事務局長) 明星聖子 山田健太 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
監事=竹内和芳 八木壮一

15.常設委員会

(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎植村八潮 芝田正夫 川井良介 中村幹 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 川井良介 芝田正夫 星野渉 諸橋泰樹
学術出版研究部会=◎橋元博樹 ○植村八潮
雑誌研究部会=◎吉田則昭 ○橋本嘉代 ○大澤聡
出版技術研究部会=◎中村幹
出版教育研究部会=◎塚本晴二朗
出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中町英樹 星野渉
出版著作権研究部会=◎樋口清一
出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧
出版法制研究部会=◎阿部圭介 ○塚本晴二朗
出版流通研究部会=◎下村昭夫 清田義昭
デジタル出版研究部会=◎植村八潮 ○中村幹
歴史部会=◎浅岡邦雄 田中公子
関西部会=◎湯浅俊彦 佐竹久仁子 中村健 羽生紀子 吉川登
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 中村幹 石沢岳彦 茨木正治 稲田隆 上田宙 大和博幸 掛野剛史 末包愛 玉川博章 長谷川一 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 下村昭夫 田中公子 橋元博樹
(5)関西委員会=◎吉川登 佐竹久仁子 中村健 羽生紀子 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎山田健太 遠藤千舟 竹内和芳 蔡星慧 塚本晴二朗 羽生紀子 樋口清一 明星聖子 文ヨン珠 山本俊明 吉田公彦 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎川井良介 茨木正治 大和博幸 掛野剛史 蔡星慧 田中薫 星野渉
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉