2018年度事業報告(2018年4月1日~2019年3月31日)

1.概 況

 1969年3月に設立された日本出版学会は、創立から50年をむかえ、新たな時代への歩みを進めている。これまで設立の理念と志を尊重し、円滑な研究者の交流や情報交換をおこない、研究成果の発表のために、学会誌や会報の発行、研究発表会や各種の部会活動、そして国際出版研究フォーラム(IFPS:The International Forum on Publishing Studies)への参加を継続的におこなってきた。
 これらが可能となったのは、何よりも学会を構成する会員の方々の努力と、経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり、ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2018年度における日本出版学会の活動は、それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ、出版研究に対する関心は一層高められた。
 春季研究発表会は、2018年5月12日に専修大学神田キャンパスで開催した。参加者は127名であり、8名の研究発表および4つのワークショップをおこなった。
 また、創立50周年記念事業を実施した。

2.会員数

正会員        301名
賛助会員    法人  39社
名誉会員         2名
        (2019年3月末日現在)

3.総 会

 2018年総会は、2018年5月12日、専修大学神田キャンパスにおいて94名(委任状を含む)の会員が出席、2017年度事業報告、同決算、同特別会計決算、2018年度事業計画案、同予算案、同特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。

4.理事会

 2018年度の会務をおこなうため、2018年総会から本総会に至るまでの間、理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2018年5月12日
 第2回: 2018年6月19日
 第3回: 2018年8月20日
 第4回: 2018年9月25日
 第5回: 2018年10月29日
 第6回: 2018年12月10日
 第7回: 2019年3月5日
 第8回: 2019年4月22日
 第9回: 2019年5月11日

5.調査研究委員会

 調査研究委員会は、主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 7月31日(専修大学神田キャンパス)「大学教育における電子教科書の現状と課題――北米大学視察報告と大学生協の考える電子教科書」岡田憲明
 3月26日(専修大学神田キャンパス)「デジタル時代に移りゆく学術出版市場――欧米の学術雑誌と大学教科書を中心に」船守美穂
(2)雑誌研究部会
 9月27日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「雑誌メディアからたどるライトノベルの誕生・発展の軌跡」山中智省
 3月27日(専修大学神田キャンパス)MIE研究部会準備会「中学校における雑誌編集教育の実践報告」「学校図書館における雑誌所蔵の実態調査」「学校教育における学校図書館と雑誌の可能性」有山裕美子・植村八潮・野口武悟(出版教育研究部会共催)
(3)出版アクセシビリティ研究部会
 6月25日(立命館大阪梅田キャンパス)「音声読み上げ対応電子書籍による公共図書館の視覚障害者サービス」平岡一仁(関西部会共催)
 10月1日(専修大学神田キャンパス)「マラケシュ条約批准と著作権法改正、そして真の読書バリアフリーを目指して」宇野和博
 2月27日((株)図書館流通センター本社)「アクセシブルな電子書籍のために:標準化に出来ることと出来ないこと」村田真(出版デジタル研究部会共催)
(4)出版技術研究部会
 7月10日(中央区ハイテクセンター)「『デザインのひきだし』のつくりかた」津田淳子
(5)出版教育研究部会
 6月28日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「日米女性ファッション誌比較研究――アメリカのファッション誌はなぜ、政治関連記事を掲載するのか」富川淳子(出版編集研究部会共催)
 9月29日(跡見学園女子大学文京キャンパス)「『英国VOGUE 100年目の闘い』上映と字幕監修者富川淳子氏による解説」富川淳子
 3月2日(専修大学神田キャンパス)「ビッグデータを用いた『言葉』の分析と、AI(人工知能)を用いた編集・執筆支援システムの将来」酒井信・池上俊介(出版デジタル研究部会共催)
 3月27日(専修大学神田キャンパス)MIE研究部会準備会「中学校における雑誌編集教育の実践報告」「学校図書館における雑誌所蔵の実態調査」「学校教育における学校図書館と雑誌の可能性」有山裕美子・植村八潮・野口武悟(雑誌研究部会共催)
(6)出版産業研究部会
 10月3日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「中小規模版元から見る出版産業の現実と展望」高島利行
 2月26日(専修大学神田キャンパス)「書店からみた出版産業の40年 その現実と展望」牛口順二
(7)出版史研究部会
 12月14日(上智大学四谷キャンパス)「国際著作権法のグローバル化に於ける戦間期の日本非政府アクターの役割」マイ・ハートマン
(8)出版デジタル研究部会
 2月27日((株)図書館流通センター本社)「アクセシブルな電子書籍のために:標準化に出来ることと出来ないこと」村田真(出版アクセシビリティ研究部会共催)
 2月28日(JCIIビル)「2018年電子出版ビジネスの現状と今後の展望――文化通信アンケート調査による」植村八潮・矢口博之・星野渉・梶原治樹
 3月2日(専修大学神田キャンパス)「ビッグデータを用いた『言葉』の分析と、AI(人工知能)を用いた編集・執筆支援システムの将来」酒井信・池上俊介(出版教育研究部会共催)
(9)出版編集研究部会
 6月28日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「日米女性ファッション誌比較研究――アメリカのファッション誌はなぜ、政治関連記事を掲載するのか」富川淳子(出版教育研究部会共催)
 10月18日(日本大学法学部三崎町キャンパス)「出版文化史上の文学全集を考える」田坂憲二
(10)出版法制研究部会
 今後の研究課題、部会運営について検討をおこなった。
(11)翻訳出版研究部会
 5月12日((株)アイディ)「英文精読(1) 英文誤解の5つのポイント」柴田耕太郎
 6月9日((株)アイディ)「翻訳書編集の基礎知識」柴田耕太郎
 7月21日((株)アイディ)「誤訳はどうして起こるか」柴田耕太郎
 9月22日((株)アイディ)「産業翻訳業界はどうなっているか」高橋聡
 11月24日((株)アイディ)「映像翻訳の現在」岡田壮平
 1月26日((株)アイディ)「舞台翻訳の現在」松田和彦・吉岩正晴
(12)関西部会
 6月25日(立命館大阪梅田キャンパス)「音声読み上げ対応電子書籍による公共図書館の視覚障害者サービス」平岡一仁(出版アクセシビリティ研究部会共催)
 9月25日(立命館大阪梅田キャンパス)「青木嵩山堂を中心に見た明治期大阪出版業」青木育志
(13)MIE研究部会 設立準備会

6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し、研究発表会の企画・運営に当たった。

春季研究発表会(2018年5月12日、専修大学神田キャンパス)
〈研究発表〉
 1.「初期誌面内容の変化にみる『少女倶楽部』〈らしさ〉の創出」嵯峨景子
 2.「近代メディアミックスの形成過程Ⅱ――出版の音楽化と音楽出版を中心に」本間理絵
 3.「戦後出版界の一コマ――水上勉の虹書房・文潮社時代」掛野剛史
 4.「近代木版口絵とその二次利用の可能性」常木佳奈
 5.「書店員特性からみた営業担当者の信頼性に関する研究」横山仁久
 6.「電子書籍:2014年と2015年の紙発行書籍の電子書籍化率」伊藤民雄
 7.「「情報の自治」に寄与するための取材・編集活動に根ざした冊子制作の教育上の意義と効果に関する研究」酒井信
 8.「業界出版社・紙業タイムス社に関する一考察――日米ビジネス文化比較の視点から」前田正晶
〈ワークショップ〉
 1.「出版研究と大宅壮一文庫――ネット時代の雑誌専門図書館のあり方」塚本晴二朗・大道晴香・鳥山輝
 2.「オープン化と出版産業の変化 学術ジャーナルを軸に」鈴木親彦・天野絵里子・中西秀彦・中村健
 3.「新しい「コミュニケーションの流れ」研究の方法論を考える――雑誌とネット世論の繋がりの探り方を求めて」塚本晴二朗・笹田佳宏・茨木正治
 4.「雑誌リテラシーと「MIE(教育に雑誌を)」運動を考える」植村八潮・梶原治樹・設楽敬一・野口武悟・阿部圭介

7.日本出版学会賞

(1)受賞図書・論文
 第39回日本出版学会賞は、下記のとおりである。
【日本出版学会賞】
  竹岡健一『ブッククラブと民族主義』(九州大学出版会)
【日本出版学会賞奨励賞】
  野村悠里『書物と製本術:ルリユール/綴じの文化史』(みすず書房)
  田島悠来『「アイドル」のメディア史――『明星』とヤングの70年代』(森話社)
(2)日本出版学会賞審査委員会
 日本出版学会賞審査委員会は、第40回日本出版学会賞、第2回清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)の審査にあたった。
(3)受賞記念講演会
 7月7日(専修大学神田キャンパス)「読書する共同体とナチズムの台頭」竹岡健一
 9月15日(上智大学四谷キャンパス)「出版メディアと「アイドル」の関わりとその展望」田島悠来
 1月11日(専修大学神田キャンパス)「ルリユール・綴じの文化史」野村悠里

8.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は、学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり、第48号(A5判、148頁、700部、定価:本体2,600円+税)を2018年4月に発行し、引き続き第49号(A5判、192頁、700部、定価:本体2,600円+税)の編集をおこなった。

9.広報委員会

 広報委員会は、学会活動に関する対外的広報活動を随時おこなうとともに、学会案内の作成、および『日本出版学会会報』の企画・編集にあたり、次の各号を発行した。
  第145号=32頁、2018年4月30日(700部)
  第146号=40頁、2018年10月31日(700部)
 また、公式ウェブサイトの充実をはかり、情報発信をおこなった。

10.関西委員会

 関西委員会は、関西部会の運営に協力した。

11.国際交流委員会

 国際交流委員会は、2018年11月10日に東京経済大学国分寺キャンパスで開かれた第18回国際出版研究フォーラム(IFPS)の企画・運営をおこなった。

第18回国際出版研究フォーラム
テーマ:出版メディア・出版学の新たなる展望
〈第1セッション:出版史の視点から〉
 1.「韓国出版の歴史的視点」崔洛辰
 2.「紙媒体出版の変革趨向」陳海燕
 3.「戦前期の上海における邦字学術雑誌の展開と受容――東亜同文書院の『支那研究』を中心に」張賽帥
〈第2セッション:出版産業の視点から〉
 1.「中国におけるネット文学」周百義
 2.「韓国出版産業の視点」金善男
 3.「戦後雑誌メディアの〈他者〉表象をめぐる産業論的見地からの考察」山崎隆広
〈第3セッション:出版制度の視点から〉
 1.「出版メディア・出版学の新しい展望――出版制度の視点」金貞淑
 2.「新出版 新読書 新編集」●振省(●=赤+おおざと)
 3.「出版をめぐる著作権制度の動向と課題」和泉澤衞
〈第4セッション:出版技術の視点から〉
 1.「デジタル化時代の教育出版の新趨勢、新特徴」蘇雨恒
 2.「出版技術の視点――図書コンテンツの相互テキスト性を向上するための技術戦略研究」孔秉勳
 3.「活字出版物のバリアフリー――情報技術の進展と新しい読書メディア」近藤友子

12.役員(2020年度総会まで)

会長=植村八潮
副会長=塚本晴二朗 星野渉 湯浅俊彦
理事=飛鳥勝幸 阿部圭介 石川徳幸 和泉澤衞 磯部敦 茨木正治 梶原治樹(事務局次長) 柴野京子(事務局長) 清水一彦 鈴木親彦 玉川博章 常木佳奈 富川淳子 中川裕美 中西秀彦 中村幹 中村健 橋元博樹 樋口清一 村木美紀 矢口博之 山崎隆広 山田健太 山中智省 王萍
監事=菊池明郎 志村耕一

13.委員会メンバー

(◎=委員長・部会長、○=副部会長)
(1)総務委員会=◎星野渉 茨木正治 植村八潮 梶原治樹 柴野京子 塚本晴二朗 中村幹 湯浅俊彦
(2)調査研究委員会=◎塚本晴二朗 植村八潮 梶原治樹 柴野京子 中村幹 星野渉 湯浅俊彦
  学術出版研究部会=◎橋元博樹 ○山崎隆広
  雑誌研究部会=◎玉川博章 ○石川徳幸 ○田島悠来
  出版アクセシビリティ研究部会=◎野口武悟 ○植村八潮
  出版技術研究部会=◎田中公子 ○中村幹
  出版教育研究部会=◎清水一彦 ○鈴木親彦 ○酒井信
  出版産業研究部会=◎鈴木親彦 ○岡部友春 ○橋元博樹
  出版史研究部会=◎柴野京子 ○石川徳幸
  出版デジタル研究部会=◎矢口博之 ○梶原治樹
  出版編集研究部会=◎飛鳥勝幸 ○清水一彦
  出版法制研究部会=◎和泉澤衞 ○阿部圭介
  翻訳出版研究部会=◎柴田耕太郎 ○山崎隆広
  関西部会=◎湯浅俊彦 磯部敦 常木佳奈 中西秀彦 中村健 村木美紀
(3)『出版研究』編集委員会=◎茨木正治 ○山中智省 飛鳥勝幸 石川徳幸 磯部敦 稲田隆 上田宙 玉川博章 中川裕美 橋本嘉代 山崎隆広 山田健太 吉田拓歩
(4)広報委員会=◎富川淳子 飛鳥勝幸 石沢岳彦 古山悟由 田中公子
(5)関西委員会=◎中西秀彦 磯部敦 常木佳奈 中村健 村木美紀 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎樋口清一 和泉澤衞 塚本晴二朗 山田健太 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎植村八潮 飛鳥勝幸 今村成夫 芝田正夫 柴野京子 清水一彦 塚本晴二朗 山崎隆広
(8)創立50周年記念準備委員会=◎星野渉 和泉澤衞 塚本晴二朗 樋口清一 山田健太 王萍

14.創立50周年記念事業

 創立50周年記念事業実行委員会を組織し、寄付を募り各事業の運営をおこなった。
(1)創立50周年記念祝賀会
 2018年11月9日に出版クラブホールで開催し、創立50周年記念事業委員会委員長の野間省伸講談社社長、中国編輯学会・●振省会長(●=赤+おおざと)、韓国出版学会・李文學会長より祝辞をいただいた。
(2)第18回国際出版研究フォーラム
 2018年11月10日に東京経済大学国分寺キャンパスで開催し、84名が参加者し、日韓中計12名が研究発表をおこなった。
(3)『出版研究』の電子化
 『出版研究』の電子化をおこない、J-STAGEに第38号から第47号までを登載した。