2002年度活動報告(2002年4月~2003年3月まで)

2002年度活動報告(2002年4月~2003年3月まで)

■ 1.概 況

 学会創立33年目の活動は,混迷の度を深める経済と,緊張が続く国際環境の中で行われた.人々は直面する諸問題に対する手がかりを書物に求めると同時に,新しいコミュニケーション手段であるインターネットを活用して,世代ばかりか,国境さえも越えて情報の交換を行うようになり,長い歴史を持つ書籍出版の意味が改めて問われる状況となった.当学会における諸活動の中でもデジタル出版をめぐる研究会が活発に行われてきたことは,このような状況を反映するものであり,学会の果たす役割はその意義と重要性を増していると考えることができる.
 学会の会勢については,創立以来33年という年月の結果としての世代交代は避けられず,学会の発展に尽力した数名の物故者を見送らざるを得なかったことは残念であるが,それに倍する若い世代の人々を会員として迎えることができ,会勢は前年に引き続き上昇傾向にあった.これは,春季,および秋季研究集会における発表者や参加者の数だけではなく,質量共にその充実となって現れている.当学会はこのような活動と並行して,日本学術会議の第19期登録研究団体として登録申請を行い受理されている.
 学会財政については,深刻化する不況の中でも,学会を長期にわたって支援していただいている賛助会員社の並々ならぬ協力により,財政の必要な水準を維持しつつあるが,一部会員の会費納入の遅延については,会員各位の一層の協力が必要と考えられる.
 当学会の国際交流活動は,当初の東アジア地域をさらに拡大し,欧米の研究機関や研究者との交流も試みられるようになり,2002年度においては,ロンドンで開催された「国際図書史学会」においても会員の発表や参加が行われた.また,長年にわたって出版研究の国際交流に尽力された箕輪成男元会長に対しては,中国編集学会から「編集出版学国際交流賞」が授与された.
 1984年10月に韓国で開催された第1回国際出版研究フォーラムを嚆矢とする東アジアの交流は,2003年に第11回フォーラムが予定されており,出版に関する研究が我が国の内外で活発化し,今後とも意欲的に継続されることが期待される.

■ 2.会員数

 正会員       362名
 賛助会員  法人   73社
       個人   6名

■ 3.総 会

 2002年度総会は,2002年5月18日(土),東京都国分寺市の東京経済大学において160名(委任状を含む)の会員が出席,2001年度事業報告,同決算,同学会創立30周年記念事業決算,2002年度事業計画案,同予算案,同学会創立30周年記念事業予算案をそれぞれ審議・可決した.
 なお,第23回日本出版学会賞は,社団法人全国出版協会・出版科学研究所編『出版指標・年報』(社団法人全国出版協会・出版科学研究所),および,賀川洋『出版再生』(文化通信社)に授与され,あわせて,日本出版学会賞・特別賞が,印刷博物誌編纂委員会編『印刷博物誌』(凸版印刷株式会社)に授与された.

■ 4.理事会

 2002年度の会務を行うため,2002年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した.
 第1回:2002年5月18日
 第2回:2002年6月3日
 第3回:2002年7月29日
 第4回:2002年10月7日
 第5回:2002年11月11日
 第6回:2002年12月16日
 第7回:2003年1月27日
 第8回:2003年3月10日
 第9回:2003年4月7日
 第10回:2003年5月17日

■ 5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった.各部会の活動状況は次のとおりである.
(1)歴史部会
 2002年6月7日(日本エディタースクール)「明治期における和装・洋装本の比率-帝国図書館蔵書を中心にして」大沼宜規. 2003年2月21日(日本エディタースクール)「商品としての『円本』-改造社と春陽堂の比較を通して」高島健一郎.
 2003年3月14日(日本エディタースクール)「藤岡屋日記」にみられる『一枚摺』について」方美英(バン・ミョン).
(2)法制・出版の自由部会
 2002年11月12日(日本大学法学部6号館)「雑誌人権ボックスについて」山了吉,雑誌部会と合同.
(3)出版流通部会
 2002年7月22日(八木書店)「劇場としての書店」福島聡.
 2003年3月26日(文化産業信用組合)「21世紀のブックビジネス」竹内和芳.
(4)出版技術部会
 電子文字の設計工房の見学会等について検討を行った.
(5)雑誌部会
 2002年11月12日(日本大学法学部6号館)「雑誌人権ボックスについて」山了吉.法制・出版の自由部会と合同.
(6)理論・教育部会
 部会開催の課題と方法について検討を行った.
(7)学術出版研究部会
 2002年7月16日(東京電機大学)「米国における電子テキストの動向と課題」植村八潮,デジタル出版部会と合同
 2002年9月9日(東京電機大学)「デジタル時代の著作権処理-文献複写の著作権問題の所在」三浦勲,デジタル出版部会と合同.
 2002年10月3日(東京電機大学)「アルドゥ・アマニティウスの出版事業」雪嶋宏一.
(8)デジタル出版部会
 2002年6月25日(東京電機大学)「電子ペーパーの現状とコンテンツ開発」檀上英利・大竹善二郎.
 2002年7月16日(東京電機大学)「米国における電子テキストの動向と課題」植村八潮,学術出版研究部会と合同部会
 2002年8月5日(東京電機大学)「メディアにおける読者を考える」和田敦彦.
 2002年9月9日(東京電機大学)「デジタル時代の著作権処理-文献複写の著作権問題の所在」三浦勲,学術出版部会と合同.
 2002年9月24日(東京電機大学)「デジタル印刷/電子出版用語の標準化動向-JIS化に向けた公開レビュー」長村玄・小林敏・中村幹・植村八潮.
 2003年2月6日(サンシャインコンベンションセンター)「パネルディスクヵッション:電子出版はロマンだ!」天谷幹夫・左田野渉・林陸奥広.PAGE2003のジョイントイベントとして開催.
 2003年3月25日(東京電機大学)「出版社はコンテンツビジネスで生き残れるか-『電子辞書』ケーススタディ」荒井信之・青木三郎・流田克己.
(9)関西部会
 2002年7月12日(関西学院大学ハブスクェア)「1931-41年『主婦の友』における服飾記事について-『多色刷り口絵』を中心に」石田あゆう.
 2002年7月26日(関西学院大学ハブスクェア)「テレビドキュメント『誰が書店を殺したのか』はどのように作られたのか」戸田香
 2002年10月23日(西宮市大学交流センター)「古書店から見たインターネット時代」島元健作.
 2003年2月17日(関西学院大学ハブスクェア)「受賞作『喫茶店の時代』をめぐって」林哲夫.

■ 6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった.
 春季研究発表会(2002年5月18日,東京都国分寺市東京経済大学6号館)
〈研究発表〉
 1.「出版再生の道を考える」下村昭夫
 2.「鈴木書店の倒産の意味」中陣隆夫
 3.「1960~1970年代における企業PR誌-知的創造のメディアとしての役割」猪狩誠也
 4.「『平凡』の研究」阪本博志
 5.「読書行動論-読書効果としてのソリテュード」津田和壽澄
 6.「活字の『権威』考」湯川史郎
 7.「出版社からみたオンデマンド印刷の検証」中村幹
 8.「出版コンテンツ配信ビジネスの原稿と課題」深見拓史
 9.「学術出版の危機とオンライン化の課題-アメリカ大学出版部協会の取り組みを中心に」山本俊明
〈特別講演〉
「出版,わが想い-新評論から藤原書店へ」藤原良雄

■ 7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2002年3月20日に第32号(A5判,249頁,1000部,定価〔本体2,600円+税〕)を発行した.合わせて投稿規程の整備を行い,第3号の編集を行った.

■ 8.会報委員会

 会報委員会は,随時会合を開いて『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の2号を発行した.
 第107号=40頁,2002年8月31日(印刷部数700部)
 第108号=20頁,2002年12月31日(印刷部数700部)

■ 9.制作委員会

 前年度に引き続き,『出版研究』編集委員会と協力して『出版研究』33号の制作に当たった.

■ 10.関西委員会

 関西委員会は,学会の秋季研究発表会開催の企画・立案にあたり,日本出版学会秋季研究発表会を2002年12月7日に,大阪市アプローズタワー13階で開催した.
(1)日本出版学会秋季研究発表会
〈研究発表〉
・「日本の書店界の現状と課題」湯浅俊彦・「書籍販売におけるモティベーションとその特質-書籍商フランセス・ステロフの活動と生涯を中心として」津田和壽澄.
・「データベースビジネスと出版」三浦勲.
・「インターネットを活用した書籍流通改革への視点」星野渉.
〈講演〉
 「〈本〉の蘇生をめざして-読書論としての読書運動」植田康夫.

■ 11.国際交流委員会

 国際交流委員会は,2002年7月22日委員会を開催し,2003年度武漢において開催予定の国際出版フォーラムへの協力や,海外の関連学会との連携としての国際図書史学会との交流,ウェッブサイト英語版作成への協力,海外の出版研究団体への情報提供等を確認した.また,中国出版学会からの連絡に基づいて,2003年3月19日,委員会を開催し,2003年10月21日~24日,中国武漢市で開催予定の第11回国際出版研究フォーラムに関し,委員会として取り組むことを確認した.

■ 12.出版企画委員会

 出版企画委員会は,随時会合を開いて,『チャートとデータでみる日本の出版産業(仮題)』等の出版企画の内容について検討を行った.

■ 13.日本出版学会賞の審査・授与

 日本出版学会賞審査委員会は,第23回日本出版学会賞の審査にあたり,下記のとおり決定し,2002年5月18日,授与式が行われた.

◇日本出版学会賞
 社団法人全国出版協会・出版科学研究所編
 『出版指標・年報』
 (社団法人全国出版協会・出版科学研究所)
 賀川洋『出版再生』(文化通信社)

◇日本出版学会賞・特別賞
 印刷博物誌編纂委員会編『印刷博物誌』(凸版印刷株式会社)

■ 14.日本出版史料編集委員会

 学会と出版教育研究所との共同編集による『日本出版史料 7』(A5判,200頁,定価〔本体1,600円+税〕)を2002年8月刊行,引き続き第8号の編集に着手した.

■ 15.ウェブサイト委員会

 下記により,学会のウェブサイトを開設した.
 http://www.shuppan.jp/

■ 16.役員(2003年度総会まで)

 会長=植田康夫
 副会長=遠藤千舟
 理事=合庭惇 浅岡邦雄 有山輝雄 今井悠紀 大和博幸 植村八潮
    川井良介 木下修 清田義昭 小出鐸男 古山悟由 芝田正夫
    竹内和芳 塚本晴二朗 中野潔 中村幹 丸田耕三 道吉剛
    諸橋泰樹 山本俊明 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
 監事=中陣隆夫 藤本信彦
 事務局長=植村八潮
 名誉会長=清水英夫

■ 17.常設委員会

(◎=委員長,部会長.○=幹事)
1.総務委員会=◎遠藤千舟 植田康夫 植村八潮 清田義昭 竹内和芳
2.調査研究委員会=◎植田康夫 遠藤千舟 清田義昭
 歴史部会=◎浅岡邦雄
 出版流通部会=◎清田義昭 ○木下修
 法制・出版の自由部会=◎塚本晴二朗
 理論・教育部会=◎諸橋泰樹
 出版技術部会=◎道吉剛 ○小出鐸男
 雑誌部会=◎川井良介 ○吉田則昭
 学術出版研究部会=◎斎藤秀朗 ○植村八潮 ○金子貴彦 ○山口雅巳 ○山本俊明
 デジタル出版部会=◎植村八潮 ○中野潔
3.『出版研究』編集委員会=◎川井良介 大和博幸 道吉剛 吉田則昭
4.会報委員会=◎古山悟由 中野潔 稲田隆
5.制作委員会=◎中村幹 秋田公土 石沢岳彦 稲田隆 稲田恵美子 上田宙
6.関西委員会=◎芝田正夫 今井悠紀 湯浅俊彦 吉川登
7.国際交流委員会=◎山本俊明 遠藤千舟 竹内和芳 津田和壽澄 羽生紀子 藤本信彦 文●(女+燕)珠 吉田公彦
8.日本出版学会賞審査委員会=◎植田康夫 今井悠紀 小出鐸男 渋谷裕久 永嶺重敏 中野潔 吉田則昭
9.出版企画委員会=◎丸田耕三 植田康夫 木下修 星野渉
10.『日本出版史料』編集委員会=◎稲岡勝 浅岡邦雄 牧野正久 吉田公彦
11.ウェブサイト委員会=◎植村八潮 石沢岳彦 中野潔
関西委員会=◎吉川登 ○川口正 芝田正夫
7.国際交流委員会=◎藤本信彦 遠藤千舟 栗田明子 竹内和芳 中陣隆夫

■ 18.特別委員会

日本出版学会賞審査委員会=◎植田康夫 岡村敬二 木下修 小出鐸男 渋谷裕久

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