第19回 国際出版研究フォーラム《概要》山崎隆広(2020年11月6日)

 概 要

 山崎隆広
 (群馬県立女子大学/日本出版学会国際交流委員会委員長)

 
 第19回国際出版研究フォーラム(主催:韓国出版学会)は、2020年11月6日(金)13時から18時(日本時間)の日程で、Zoomを経由したリアルタイムのオンライン会議形式にて開催された(日本からの参加事前申込者は会員14名、一般3名、研究発表者4名)。「モバイル時代の出版革命」という全体テーマが掲げられた今大会は、「モバイル・コンテンツの生産」「モバイル・コンテンツの販売とマーケティング」「モバイル・コンテンツの読書」「モバイル・コンテンツの出版政策」の4つの議題と総括討論で構成され、それぞれのトピックに対して韓国、中国、日本の3カ国から1名ずつの発表者が登壇、計12名による熱のこもったビデオプレゼンテーションと議論が行われた。
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 今回は、とにかく異例ずくめの大会となった。当初2020年8月に韓国で開催を予定していた本フォーラムは、拡大する新型コロナウイルスの影響を受けて、初夏に延期が決定。その後、主催である韓国出版学会での検討をへて、全体テーマは同じままZoomによるオンライン会議形式で11月に実施という運びとなった。予稿集を作成し、プレゼン資料を準備して発表し、議論するという方式はこれまでと同様でも、オンライン開催への変更に伴い、様々な対応が必要とされた。一例を挙げるなら、オンライン会議という形式では3カ国語同時通訳という形式が困難な為、事前にプレゼン内容を録音録画、併せて字幕原稿も準備して提出し、3カ国語への翻訳をお願いする、といったプロセス等である。
 発表の内容面についても、全体テーマが変わらずとも、議論は必然的に「コロナ後の世界」を見据えたものを意識、反映したものになった。その意味でも、今回のフォーラムは、出版にまつわる様々な事象を、3カ国の観点から極めて現代的な視点で捉え直す得難い機会となったともいえるだろう。
 今回のフォーラムを通じて、奇しくも全体テーマに「モバイル」という言葉が掲げられていた通り、コロナ禍における現代の出版とそれを支える技術との関係性、そして出版とテクノロジーの間のこれからの距離を考えることの重要性を改めて感じることとなった。そして、今後もオンライン会議システムを利用した国際学会などが増えていくことが予想されるが、例えば発表と発表の間のわずかな時間に生まれる発表者と会場のちょっとしたやりとりや、その後の懇親会での対話など、「学会の余白」ともいえそうな時間をこれからも確保していくこと、そういったいわば学会の「公式時間」以外のところから生まれる思わぬ発想やつながりも引き続き大事にしていくことが、とても重要と思われる。
 最後に、予期できない事態の連続の中、円滑なオンライン会議のセットアップ、予稿集の作成、字幕翻訳の準備ほか、大変なフォーラム運営を極めてタイトな時間の中で見事に取り仕切ってくださった韓国出版学会の皆様、慌ただしいスケジュールの中で発表資料の準備に対応してくださった発表者および事務局の皆様、そして国際出版研究フォーラムとしては初めてとなるオンライン会議に参加してくださった皆様に、心からの感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。