アメリカの書店事情  大久保徹也・下村昭夫 (2005年10月24日)

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出版流通部会   発表要旨 (2005年10月24日)

アメリカの書店事情

 10月24日,2005年度の第一回出版流通研究部会「アメリカの書店事情」が八木書店・会議室)で開かれ25名の参加を得た。
 報告者は,先ごろ「ニューヨークの書店ガイド」を上梓された大久保徹也さん(集英社・雑誌販売部)と下村昭夫さん(会員・出版メディアパル)のお二人。

I.「アメリカの出版・書店事情」
   下村昭夫

 アメリカの出版統計は,『出版年鑑』に収録されているデータしか一般的には入手困難であるが,金平聖之助氏のアメリカ研究会などで配布された資料を基に,概略をリポートしたい。
 『出版年鑑2005』によると,2003年の最終売上規模で223.98億ドル,04年の中間売上規模は234.21億ドル(前年比4.6%増)となっているが,03年から統計アイテムが変化し,02年までとの連続性はない(アメリカ出版者協会:AAP調べ)と報告されている。
 234億ドルの内訳では,成人向けハードカバー24.52億ドル,成人向けペーパーバックス14.65億ドル,児童向けハードカバー6.98億ドル,児童向けペーパーバックス4.49億ドルなど,一般書の合計は50億ドルに達した。そのほか,宗教書12.82億ドル,専門書33.79億ドル,小中高の教科書42.9億ドル,高等教育関連書33.91億ドルと好調である。
 また,アメリカ小売書店協会ABAの調査によると,04年の小売書店の売上は168億ドルとなっており,そのうち,三大チェーン店の売上は84億ドル(B&A42.2億ドル,ボーダーズ37億ドル,BAM4.62億ドル)と50%のシェアを占めている。
 成人向け書籍の01年の販売ルート別のシェアでは,大型チェーン店22%,独立系・小規模チェーン店15.4%,ブッククラブ19.2%,ネット書店8.1%,ユースドブック5%などとなっており,日本のように「本は本屋さんで買う」という状況とはかなり違っている。

II.「日本の書店とアメリカの書店の違い」
   大久保徹也

 アメリカの出版流通を学ぶ時,日本とまったく異なっていることを,理解する必要がある。もっとも大きい違いは次の二点である。

1.書籍と雑誌は別のメディアであり,流通も小売も完全に別なシステムである。
 アメリカの雑誌は,広告を載せた通販カタログのようなスタイルである。
 出版社は雑誌の売り上げ収入をベースにした原価構成ではなく,広告収入を基礎とした原価構成をとっている。そのため最低の発行部数をスポンサーに対して保障する必要がある。
 最低の保障部数を安定させるためには,店頭の一部売りに頼るのではなく,定期購読者を確保することが重要な販売戦略になる。
 定期購読料金は,値引きされるのが通例で,購読期間の長短で25~50%オフ以上に値引きされる。通常,アメリカの雑誌の購買者は80%は定期購読といわれている。
 その他の主な販売ルートはスタンドやドラッグストアと言った“非書店”である。

2.アメリカには,日本のような再販制度はない。
 再販売価格維持制度とは,販売価格をメーカーが拘束できる制度で,この制度を採用している日本では,出版物は定価(メーカーが決定した価格)で全国どこでも販売される。
 アメリカは,この制度がないので,出版物の販売価格は,小売店(主には書店)が決めることができる。
 そのため,巨大チェーン書店では,ベストセラーを大量に仕入れ,値引き販売本(出版社の小売希望価格の5~20%引きくらいが多い)を店頭に山積みし,顧客誘引効果を狙っている光景は日常的である。
 日本の書店では,売り上げ構成で,一般的に雑誌の売り上げが全体の半分以上を占めている。
 アメリカでは大型チェーン書店以外では,ほぼ雑誌は扱っていない。
 仕入れに関しても,日本は取引している販売会社(取次)にすべて依存している。おおむね一般の書店が取引する取次は一個所である。
 アメリカでは再販制がないため,仕入れが書店経営の最重要ポイントである。より条件のよい仕入れをするために,出版社との直接交渉を含め,数箇所の仕入れルートをもたなければ十全な書店経営はできない。
 仕入れの個性と能力が,その書店の個性と魅力につながり,顧客はそれぞれの書店のそのような個性の違いを楽しみながら,自分好みの書店を選び出版物を購入している。

 下村氏は各種のデータを使って,大久保氏は,ニューヨークの書店事情の取材や日常のビジネスの経験から,報告の合間に,ニューヨークの独立系書店事情を織り交ぜ,三大チ―ェン店のシェアが高まる中で,生き抜く,ニョーヨークの独立系書店の活躍ぶりをいきいきとリポートしてくれた。
(下村昭夫)